1月16日の日本の昔話
竹から生まれた女の子
鳥取県の民話→ 鳥取県情報
むかしむかし、あるところに、子どものいない、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
「なあ、ばあさん。わしらにも子どもがあると、どんなにいいだろうね」
「そうですね。でも、わたしもおじいさんも年ですから、もう無理ですね」
「そうだな。寂しいことだ」
そんなある日の事、おじいさんが山へ竹を切りに行くと、何と竹の切り口から小さな女の子が飛び出して来たのです。
「おおっ、これは神さまが授けて下さったに違いない」
おじいさんは大喜びで女の子を家に連れて帰ると、それはそれは大切に育てました。
女の子はすくすく育って、やがてとてもきれいな娘になりました。
ある日、娘が言いました。
「おじいさん、おばあさん、わたしに機織り(はたおり)をさせて下さいな」
「ああ、いいとも、いいとも」
おじいさんはさっそく町へ行って、機織り道具を買いました。
そして娘は、機織り道具を自分の部屋に置いてもらうと、
「お願いですから、どんな事があっても、機を織るところを見ないで下さいな」
と、頼みました。
それから何日かして、娘は出来上がった布をおじいさんに渡して言いました。
「これを、町で売って下さいな」
その布は、たちまち高いお金で売れました。
おじいさんは布が出来るたびに町へ売りに行き、たくさんお金をもらって帰ってきました。
おかげで貧しかった家も、みるみるお金持ちになりました。
「それにしても、何て不思議な布だ。売った人に聞いたが、あの布で着物を作ると心まで温かくなるそうな」
「ほんにのう。いったい、どうやってあんな布が織れるのでしょうね」
おじいさんとおばあさんが、そのわけを娘に尋ねても、
「はい、『おじいさんもおばあさんも幸せなれます様に』と、神さまにお祈りをして、一生懸命織るだけですわ」
と、言うばかりです。
でもある日、とうとう我慢出来なくなった二人は娘との約束を破って、こっそり娘の部屋を覗いたのです。
すると、どうでしょう。
部屋の中では小鳥が一羽、自分の柔らかい羽を抜いて、それを布に混ぜながら機を織っていたのです。
小鳥はすっかりやせこけて、羽はすっかりボロボロです。
「まさか、あの娘が小鳥だなんて」
二人は思わず、顔を見合わせました。
その途端、小鳥は、
「ピィー」
と、悲しそうに鳴き、そのまま外へ飛び出して山の方へ飛んで行きました。
「ああ、娘や。約束を破って悪かった。謝るから、帰って来ておくれ」
でも、小鳥は二度と帰っては来ませんでした。
こうしておじいさんとおばあさんは、また子どものいないさびしい毎日を送る様になりました。
おしまい
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