9月1日の日本の昔話
したきりスズメ
むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
心のやさしいおじいさんは、一羽のスズメをかっていました。
ある日スズメが、おばあさんがつくったノリを、ツンツンと、つついて食ベてしまいました。
「このいたずらスズメ!」
おばあさんはおこって、スズメをつかまえると、ハサミでスズメの舌を切ってしまいました。
チュッ、チュッ、チュッ!
スズメはなきながら、やぶの中へ逃げていきました。
まもなく、おじいさんが帰ってきましたが、スズメの姿が見えません。
「おばあさん、わしのスズメはどこにいったかの?」
「フン! あのいたずらスズメ。わたしのノリを食べてしまったから、舌をハサミで切ってやったわ」
「ああ、かわいそうに・・・」
心のやさしいおじいさんは、舌を切られたスズメのことが心配でなりません。
「だいじょうぶだろうか? ごはんはちゃんと、食べているだろうか? ・・・よし、さがしにいこう」
おじいさんは、スズメの逃げたやぶに、スズメをさがしに行きました。
「おーい、おーい。スズメやスズメ。舌切りスズメは、どこにいる?」
すると、やぶのかげから、チュンチュンと、スズメの鳴く声がします。
「おじいさん、ここですよ。スズメの家はここですよ」
やぶの中から、スズメたちがおおぜいあらわれました。
見ると、舌を切られたスズメもいます。
「おおっ、すまなかったな、どれ、舌はだいじょうぶか? ・・・ああっ、よかった。これならだいじょうだぶ」
スズメの舌をみて、おじいさんはホッとしました。
「ありがとう、おじいさん。さあさあ、わたしたちの家で休んでいってください」
スズメたちは、みんなでおじいさんをスズメの家へ連れていきました。
そして、みんなでスズメ踊りをしたり、おいしいごちそうをたくさん出してくれました。
おじいさんは、もう大喜びです。
「それでは、暗くならないうちに、おいとまをしよう。スズメさんたち、ありがとう」
おじいさんが、お礼をいって帰ろうとすると、スズメたちは大きなつづらと小さなつづらを持ってきました。
「おじいさん、おみやげにどちらでも好きな方を持っていってくださいな」
スズメたちがいいました。
「ありがとう。でも、わたしはこのとおり、おじいさんだから、あまり大きなつづら(→衣服などを入れるカゴ)は持つことができない。小さいほうをいただいていきましょう」
おじいさんは、小さなつづらをおみやげにもらって、背中に背負って帰っていきました。
そして、家に帰ってスズメのおみやげをあけてみると、なんと、中には大判小判がたくさん入っていました。
宝石やサンゴなどの美しい宝物も、ギッシリとつまっています。
スズメたちは、やさしいおじいさんに、みんなでお礼のおくり物をしたのです。
「まあ、まあ、まあ、なんていい物をもらったんでしょう。わたしもほしいわ」
スズメのおみやげを見て、おばあさんはうらやましくてなりません。
「どれ、わたしもいって、もらってこようかね」
おばあさんは、スズメの家へ出かけていきました。
そして、スズメの家にむりやり入ると、
「ごちそうも踊りもいらないよ。すぐにかえるから、はやくみやげを持ってくるんだよ」
「はい、では、大きいつづらと小さいつづら・・・」
「大きいつづらに決まっているだろ!」
おばあさんは、大きいつづらを受け取ると、急いで家へ帰っていきました。
「しかし、なんとも重たいつづらだね。でも、それだけお宝がたくさん入っているしょうこだよ。ウヒヒヒヒヒッ」
家までもう少しでしたが、つづらの中にどんな物が入っているのか、見たくてなりません。
「どれ、何が入っているか、見てみようかね」
おばあさんは、道ばたでつづらをおろすと、中をあけてみました。
「きっと、大判小判がザックザクだよ。・・・うん? ・・・ヒェー!」
なんと、つづらの中には、ムカデにハチにヘビ、そして恐ろしい顔のおばけたちが、たくさん入っていたのです。
「たっ、助けておくれー!」
おばあさんはいちもくさんに、家へ逃げ帰りました。
そして、おじいさんにこのことを話すと、
「おばあさん、かわいいスズメの舌を切ったり、欲ばって大きなつづらをもらったりしたから、バチがあたったのだよ。これからは生き物をかわいがっておやり。けっして、欲ばらないようにね」
おじいさんは、おばあさんにそういいました。
おしまい
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