10月1日の小話
柿どろぼう
やみ夜に、ふたりの若い男が、こそこそとはなしをしております。
「今夜は、まっ暗やみだから、となりの柿をぬすもうじゃないか」
「うん、それじゃあ、おれが木にのぼって、ぼうでたたきおとすから、おまえは、下でひろってくれ」
そうだんがまとまると、さっそく、ひとりの男が木にのぼり、ぼうでたたきますと、柿はごろごろおちてきます。
下でひろう役の男は、あわててひろい始めましたが、あんまりあわてたので、深いどぶの中におちてしまい、どうしてもあがれません。
「おーい、おちたおちた」
どぶにおちた男がさわぐと、
「おちるはずだよ。たたいてるんだから」
「いやいや、おちたおちた」
「あたりまえだ。早く、ひろえ」
「ちがう、どぶにおちたんだ」
すると、木の上の男は、
「どぶ? そこにあるのは肥(こえ)だめ(肥料にする糞尿を、発酵させるためのもので、ひどいにおいがします)だ。そんなところにおちたのは、きたないから、すてておけ」
おしまい
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