4月9日の日本民話
人を食わなくなったオニ
岡山県の民話
むかしむかし、あるところに、とても気の強い男がいました。
ある日の事、山で仕事をしていたら、いきなりおそろしい人食いオニが現れて、男をペロリと一口で飲み込んでしまいました。
でも、男の人は少しもこわがりません。
「ほう、これがオニののどか」
と、言いながら下へおりていくと、赤いかべにかこまれたところへ出ました。
ふと前を見ると、上からひものようなものが三本ぶらさがっています。
「なんだこりゃ?」
男の人は、一本のひもを引っぱってみました。
そのとたん、まわりが地震みたいにゆれて、オニが大きなクシャミをしたのです。
「は、は、はっ、はくしょん!」
(なるほど、これはクシャミの出るひもだな)
男の人は、もう一本のひもを引いてみました。
すると、オニは大きな口を開けて、
「わっはっはっは、わっはっはっは」
と、笑い出したのです。
(いよいよ、おもしろくなってきたぞ)
男の人は、最後のひもを引っぱってみました。
するとさっきまで笑っていたオニが、きゅうに泣き始めたのです。
「うぇーーん、うぇーーん」
(これはいいものを見つけた。もし、いっぺんにひもを引っぱったらどうなるだろう?)
男の人は三本のひもを一つににぎりしめると、思いっきり引っぱってみました。
さあ、たいへんです。
はくしょん!
わっはっはっは。
うぇーーん、うぇーーん。
くしゃみをしたり、笑ったり、泣いたりと、えらいさわぎです。
ですが男の人は、ひもを引っぱるのをやめません。
オニは苦しくて苦しくて、今にも倒れてしまいそうでした。
(さあ、そろそろ出るとするか)
男の人は三本のひもをはなすと、クシャミのひもを力いっぱい引っぱりました。
は、は、はっ、はくしょん!
ものすごいクシャミと一緒に、男の人はオニの口から外ヘとびだしました。
「やい、オニよ。もう一度飲み込んでみるか?」
「ブルブルブル。とんでもない!」
オニはあわてて首を横にふると、いちもくさんに逃げていきました。
そんなことがあってから、オニはもう二度と、人間を食ベなくなったという事です。
おしまい
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