5月12日の日本民話
テングを説きふせた男
富山県の民話
むかしむかし、黒部(くろべ)の山奥では、不思議なことや恐ろしいことがよく起こりました。
木こりが木を切ろうとしてオノを打ちこむと、とたんに空がかきくもって山や谷が大きな音を立てて動きだしたり、突風がふきつけて木こりを空中に投げとばしたり、木に登っている人は地面にたたきつけられたりするのです。
これは、テングのしわざだといわれていました。
ある時、山林の切り倒しをまかされていた男が、大勢の木こりをやとい入れて山林を切り倒そうとしたところ、やはり空がかきくもって、山や谷が大きな音を立てて動き始めました。
そこで男は谷に向かって、大きな声でいいました。
「我々は殿さまに、何百両ものお金をおさめなければならないのだ。谷の木を全て切りだしても足りないくらいだ。お前が神通力(じんつうりき)でもって、目の前にお金をつんでくれるならば、我々は木を切らぬぞ」
いい終わると、ソロバンをパチパチとはじいてみせました。
すると、大きな音がピタリとやみました。
あくる朝からはよい天気が続き。木にオノを入れても、何も起こらなかったという事です。
おしまい
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