7月12日の日本民話
オニギリ地蔵
富山県の民話
むかしむかし、立山(たてやま→富山県の南東部)のふもとに、まずしいけれど仲のよい木こりの一家がありました。
ところがある時、母親はかぜがもとで、三つになる男の子を残して死んでしまったのです。
野辺送り(のべおくり→おそうしき)の帰り道、男の子は村はずれに立っているお地蔵さんを見て、
「あっ、お母ちゃんだ!」
と、いうと、お地蔵さんのそばにかけよって、抱きついてはなれませんでした。
かわいそうに思った父親は、新しい母親をむかえてやりましたが、けれども男の子はあたらしい母親にはなつかず、いつもお地蔵さんのそばにいました。
新しい母親は男の子がきらいになり、男の子につらく当たるようになりました。
ある日の事、男の子がおねしょをすると、母親は怒って何も食べさせてくれませんでした。
ひもじくなった男の子が泣きだすと、
「地蔵さまがおにぎりを食べられたら、お前にも食べさせてあげる」
と、いい、オニギリを持たせました。
男の子はさっそく、お地蔵さんに頼みました。
「どうか、このオニギリを食べてください」
すると不思議な事に、石のお地蔵さんがオニギリをパクリと食べたではありませんか。
喜んだ男の子は新しい母親にこの事を話しましたが、母親は信じてくれません。
それどころか、
「お前が食べたのだ!」
と、耳をひっぱられたため、男の子の耳が聞こえなくなってしまったのです。
母親はまた男の子にオニギリを持たせると、そっと後をつけました。
そうとは知らない男の子は、お地蔵さんの口にオニギリを当て、
「もう一度、オニギリを食べてください」
と、お願いすると、お地蔵さんは涙をハラハラ流しながら、オニギリを食べはじめました。
母親はこれを見てビックリ。
手を合わせて、お地蔵さんと男の子にあやまりました。
聞こえなくなった男の子の耳は、母親がいっしょうけんめいお地蔵さんにお願いしたので、やがてもと通り聞こえるようになったという事です。
おしまい
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