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夏の怖い話し特集
2009年 7月27日の新作昔話
お豊虫(とよむし)
東京都の民話
むかしむかし、伊豆七島の八丈島(はちじょうじま)は、罪をおかした人たちが島流しにされたところでした。
ある年の事、この島に放火の罪で、お豊という十五歳の少女が江戸から船で送られてきました。
放火は大罪なので、五年、十年と、お豊の島でのくらしが続きました。
島には毎年一度だけ、江戸から御用船(ごようふね)とよばれる江戸幕府の船が許し状を持ってきて、罪を許された人が船に乗って帰っていくのですが、お豊への許し状はありませんでした。
そして十五年がたつと、お豊は、
「もう自分には、許し状は来ないだろう。だったら、この島で生きる方法を考えよう」
と、考え、島でのくらしが二十年をむかえる頃には、何人もの男をしたがえる女親分になっていたのです。
そしてひそかに島からの脱出を企むと、ある夜中、お豊は六人の仲間と島からの脱出を決行したのです。
島の人たちが寝しずまるのを待って、お豊たちは漁師の舟を盗むと、まっ暗な海へとこぎ出しました。
お豊は舟をこぐ男たちを、しかりつけるようにはげましながら沖を目指しましたが、小さな舟では沖を流れる速い潮を乗り越えることは出来ません。
何度も何度も潮に押し返されるうちに、とうとう朝を迎えてしまいました。
そして漁師の知らせを受けて駆けつけた人に、捕まってしまったのです。
捕まったお豊は、死刑を言い渡されました。
そして死刑が行われる当日、お豊は見物に集まった島の人たちにむかって、大きな声でいいました。
「いいかい、覚えておきな。あたしは死んだら虫になって、お前たちがつくる島の作物を、かたっぱしから食い荒らしてやるからね!」
そして次の年、八丈島にテントウムシダマシという虫が大発生して、お豊が叫んだように、島の作物に大きな被害を与えたのです。
それから島の人たちはこの虫の事を『お豊虫』と呼んで、恐れるようになったという事です。
おしまい
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