きょうの日本民話
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2010年 1月4日の新作昔話
西宮エビスは丹後の泣きエビス
京都府の民話
むかしむかし、幸助という漁師が住んでいました。
幸助は小さい頃から身体が弱かったので、健康のために、毎朝浜を歩くことにしていたのです。
そんなある朝、幸助がいつもの様に浜を歩いていると、何かキラキラ光り輝く物が浜に打ち上げられています。
「なんだろう?」
幸助が近寄ってみると、それは夕べの荒波で打ち上げられた、小さなエビスさまの像だったのです。
「これは立派なエビスさまだ」
幸助はエビスさまの像を家の持って帰って供えましたが、ボロ屋に立派なエビスさまは似合いません。
そこで幸助は、村はずれのお宮さんにエビスさまをまつったのです。
それからしばらくしたある日、旅の僧がこの村を訪れましたが、長旅であまりにも薄汚れていたので、誰も相手にしてくれません。
そこで仕方なく、村はずれのお宮さんに泊まることにしたのですが、入ってみると何かがキラキラと光り輝いています。
見てみるとそれは、幸助が納めた金色のエビスさまだったのです。
「これは、良い物を見つけたぞ」
旅の僧は周りに誰もいないことを確かめると、そのエビスさまを盗んで、そのまま逃げてしまいました。
「よし、誰も来ていないな。なかなか、良い物が手に入ったわい」
旅の僧が、満面の笑みを浮かべながら道を歩いていると、
「丹後へ返りたい、丹波へ返りたい」
と、小さな声が聞こえたのです。
「誰だ!」
旅の僧は振り返りましたが、誰もいません。
「おかしいな。気のせいか」
そして再び歩き出すと、
「丹後へ返りたい、丹波へ返りたい」
と、また小さな声が、聞こえたのです。
「誰だ! 誰かいるのか!」
旅の僧は用心深く辺りを見回しますが、やはりだれもいません。
でも小さな声は、それからも、
「丹後へ返りたい、丹波へ返りたい」
と、言うのです。
そんな事が三日間続いたので、すっかりまいってしまった旅の僧は、ふと、その声が自分の背負っている荷物の中から聞こえてくる事に気づいたのです。
「もしや、あのエビスさまが?」
そう思った旅の僧は、盗んだエビスさまを取り出してみました。
するとエビスさまは、はっきりと、
「丹後へ返りたい、丹波へ返りたい」
と、言って、その後、
「ウェーン、ウェーン」
と、泣き出してしまったのです。
「これは、とんでもない物を盗んでしまったな」
旅の僧は、エビスさまを盗んだことを後悔しましたが、今さら持ち帰っても、盗人として捕まるだけです。
「かといって、魂が宿っているエビスさまを、捨てるわけにもいかないし」
そこで旅の僧は西宮までやってくると、近くの神社にエビスさまを納めて、どこかへ行ってしまいました。
その後、このエビスさまをまつってある神社が、商売にご利益があると商人たちが集まることで有名になり、やがて今の西宮エビス神社になったのです。
おしまい
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