2013年 2月15日の新作昔話
相撲は命の洗濯
むかし、三人の若者が、ある有名な占い師に自分たちの運命を占ってもらいました。
すると占い師は大きな目を見開いて、三人にこんな事を言いました。
「これは大変! お前たち三人は、明日の昼頃に死ぬ運命ですぞ!」
「えっ!」
「何と!」
「そんな!」
びっくりした男たちは何とか死ななくても済む方法はないかと尋ねましたが、占い師は暗い顔で首を横に振るばかりです。
「人には、決して変える事の出来ない運命がある。お前たちが死ぬのは、その変える事が出来ない運命なのだ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
三人の若者はがっかりしましたが、どうせ死んでしまうのなら最後にやりたい事を思いっきりやってから死のうと考えました。
そこで一人は、大好きな芝居を見に行きました。
もう一人は、親戚を呼び集めて美味しい物をたらふく食べる事にしました。
そして最後の一人は、大好きな相撲を見に行く事にしました。
やがて三人が死ぬ運命の昼過ぎになり、芝居を見に行った若者は突然崩れた芝居小屋の屋根の下敷きになって死んでしまいました。
美味しい物をたらふく食べる事にした若者は、料理に出てきたフグの毒に当たって死んでしまいました。
そして相撲を見に行った若者は、夢中になって相撲を見ているうちに時間を忘れて、ふと気がつくと夕方になっていました。
「おかしいな。確か、昼頃に死ぬはずだったのに」
そしてそれからもその若者は死ぬどころか、病気一つせずにとても長生きをしたのです。
それからというもの、相撲は悪い邪気を体から追い払う「命の洗濯」と言われるようになりました。
おしまい
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