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3月30日の日本の昔話
サルの恩返し
猴仔報恩
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、九州のお大名の家来に、勘助(かんすけ)という男がいました。
頭擺頭擺,九州个諸侯(大名)屋下管家裡肚,有一個安到勘助个細倈。
勘助の仕事は飛脚(ひきゃく)で、手紙をかついで届ける事です。
勘助擔任信差(飛脚),負責送信仔。
その頃の大名たちは珍しい刀や名刀が手に入ると、これを江戸まで飛脚に運ばせたのです。
該量時,諸侯若係得了寶貴無斯有名个刀仔,就會請信差送去江户(東京)。
そして勘助も将軍さまに献上(けんじょう)する大切な刀をかかえて、東海道(とうかいどう)を江戸に向かっている途中でした。
所以,勘助拿等獻分將軍个重要刀仔經過東海道去江户途中。
さて、勘助が薩摩峠(さつまとうげ)という大きな峠を走っていると、小高い崖の上でサルのむれがキーキーと鳴き騒いでいるのに出会いました。
勘助行到薩摩龍峎个大山崗頂,崩崗頂看著一群猴仔吱吱滾。
「何事だ?」
「麽个事情?」
勘助は、海辺の方を見てびっくり。
勘助向海脣該片析看過去,著驚一下。
何と驚いた事に化け物の様な大ダコが、一匹のサルを海へ連れ去ろうとしているのです。
看著像妖怪个章魚,拖等一條猴仔去海肚。
「よし、助けてやるぞ!」
「好,𠊎來摎佢𢯭手!」
勘助は腰に差していた刀をサッと抜いて、
勘助挷出掛在腰仔側旁个刀仔,
「えいっ、えいっ、えいっ!」
と、大ダコめがけてきりつけました。
「eid!eid!eid!」連剁至剁。
ところがこの大ダコの体がとても固くて、刀はあっという間にボロボロになってしまいました。
毋過,大章魚个膴身當硬,刀仔剁無二下就虬淨淨。
「これは、とんでもない化け物だ!」
「這係毋識看過个妖怪!」
勘助は逃げだそうと思いましたが、そのとき勘助は、将軍さまへ届ける刀の事を思い出しました。
勘助想愛逃走个時節,佢想著送將軍刀仔个事情。
「そうだ。将軍さまに差し上げる刀なら、あの化け物ダコをやっつけられるかもしれん。将軍さま、ちょっとお借りします」
「係哦,假使用愛送將軍該隻刀仔,定著會打贏妖怪章魚。將軍大人,刀仔借用一下。」
サルはもう、大ダコと一緒に海の中に引きずり込まれています。
猴仔早就分大章魚拖落海肚去了。
勘助は素早く裸になると、将軍さまの刀を口にくわえて海に飛び込みました。
勘助遽遽脫光衫褲,嘴銜等將軍个刀仔跳落海竇肚去。
そしてサルを助け出すと、大ダコの体に将軍さまの刀を振り下ろしました。
想愛救出猴仔,就用將軍个刀仔去斬大章魚之膴身。
「えいっ!」
「eid!」
ところが将軍さまの刀は、大ダコの体に当たったとたん、ポキリと折れてしまったのです。
毋過,將軍个刀仔揬著大章魚个膚身黏時斷截。
「大変だ! 将軍さまに差し上げる刀を折ってしまった!」
「阿姆哀!愛献分將軍个刀仔續抝斷忒!」
勘助はサルを助けて海からあがって来たものの、あまりの事にその場へヘナヘナと座り込んでしまいました。
勘助因為在海肚救猴仔上來,悿到會死坐在該。
その時、仲間を助けてもらったお礼なのか、サルたちかやって来て勘助に一本の刀を差し出しました。
該兜猴仔為著報答佢幫助朋友,拿一支刀仔來分勘助。
「なんじゃ?刀か?これをくれると言うのか?」
「麼个?刀仔?送分𠊎係無?」
勘助は、その刀を抜いてみてびっくりです。
勘助摎該刀仔挷出來看,著驚一下。
「おおっ!これは何と素晴らしい刀じゃ。さっきの刀とは比べものにならんぞ!これなら将軍さまも、喜んでくださるに違いない」
「哦~!這係當寶貴个刀仔,頭下該支摎佢無比!將軍定著會中意。」
素晴らしい刀を手入れた勘助が、さっそく出かけようとすると、サルたちが道をふさいで海の方を指差します。
勘助拿等刀仔想愛走个時節,該兜猴仔企在路項擋等,手指比等海面。
勘助が海を見ると、あの化け物ダコが再びサルたちを捕まえようとやって来ていたのです。
勘助看著妖怪又愛來捉猴仔樣。
「わかった、わかった。あの化け物ダコを退治しろと言うのだな」
「知了,知了,愛𠊎消滅怪物敢。」
こうして勘助は、サルの刀で再び化け物ダコにきりかかりました。
勘助用猴仔送个刀仔再過去斬章魚妖怪。
「てや!とう!おおっ、これはすごい切れあじ。これなら勝てるぞ!」
「這刀仔還利哦,這擺包贏个。」
サルの刀は化け物ダコの固い体をスパスパと切り裂き、あっという間に化け物ダコを退治したのです。
猴仔个刀仔兩下半就摎剁開析,消減忒了!
後から調べたところ、勘助がサルからもらった刀は刀作りの名人の五郎正宗(ごろうまさむね)の名刀だったそうです。
後來經過調查,勘助在猴仔該得著个刀仔,係有名个製刀人五郎正宗(goromasamune)做出个刀仔。
将軍さまはこの刀を『猿正』と名付けて、いつまでも家宝として大切にしたということです。
將軍摎該刀仔安名安到『猿正』,做傳家之寶永久保存。
註:飛脚(ひきゃく)とは、今でいう、宅配人です。
註:飛脚係這下个宅配達人。
急用を遠くへ知らせたり、信書・金銀・貨物などの運搬するのです。
搬運遠方通知臨時臨急愛用个信書・金銀・貨物等。
すでに鎌倉時代に京・鎌倉間の鎌倉飛脚・六波羅飛脚などがありましたが、定置的な通信機関として江戸時代に発達しました。
在鎌倉時代就有京・鎌倉間个鎌倉信差・六波羅信差。毋過固定个通信機関係江戸時代開始發達。
おしまい
煞咧
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