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5月14日の日本の昔話

銀のさじ

銀のさじ
銀湯匙

福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)

♪音声配信(html5)
音声 スタヂオせんむ

むかしむかし、江戸の町に餅などを売っている小さな店がありました。
頭擺頭擺,在江戶街路有一坎賣甜粄个細店仔。

店の主人の五郎は貧乏ですが、近所でも評判の正直者で、お金を払えない人にはただで餅をわけてあげました。

店頭家五郎當窮苦,但係,就近鄰舍講佢當老實,佢對負擔毋起个人提供免費个甜粄。


そのため、五郎はますます貧乏です。

因為恁樣,五郎變到越來越窮苦。


ある日の事、五郎が餅を店に並べていると、前の道に何か白く光る物が落ちていました。

有一日,五郎在店仔肚排甜粄時節,面頭前路上有毋知麼个會發光个東西跌下來。


「何だろう?」

「麼个東西?」


不思議に思いながらそばへ行ってみると、何と銀のさじが六本も落ちていたのです。

感覺奇怪,行到脣頭去看,原來係有六支銀湯匙跌下來!


「こいつは、大変なお宝だ」

「這東西係當重要个寶。」


五郎は六本のさじを拾い上げると、あわてて辺りを見ました。

五郎拈起六支湯匙,慌慌張張四圍巡看。

しかし、どこにも人影はありません。

但係,無半滴魂影。


(どうしよう?落とした人は、さぞ困っているだろう)
(仰結煞?跌忒个人定著無結無煞。)


五郎はさっそくさじを持って、落とした人を探しに出かけました。

五郎煞煞拿等湯匙,出去尋跌忒个人。


「誰か、このさじを落とした人はいませんか?わたしの店の前に落ちていたのです」

「有麼人跌忒這湯匙無?在𠊎个店仔面前跌忒。」

近所の人たちに尋ねても、みんなは知らないと首を横に振るばかりです。

問鄰舍,全無人知,逐個人都搖頭。


正直者の五郎は店を休んで、村から村へと落とし主を探し歩きました。

老實个五郎摎店仔關起來,一隻個村莊過一隻村莊去尋失主。

そして十日ほどたって、ようやく落とし主が見つかりました。

大約十日後,總算尋著跌忒个人。


それは町で古道具屋を開いている、仁兵衛
(じんべえ)だったのです。
該係街路開舊家具店个仁兵衛。


「やれやれ、見つかって良かった」

「好了、好了,當歡喜尋著了。」


そこで五郎は仁兵衛の店へ銀のさじを届けに行ったのですが、ところがこの仁兵衛は、とても欲の深い人で、わざわざ拾って届けてくれた正直者の五郎から少しでもお金を巻き上げようと、こう言ったのです。

所以,五郎摎銀湯匙送去仁兵衛个店仔,但係仁兵衛係一個非常貪心个人,希望在老實个五郎該位得著一點錢,斯講:


「確かに、この銀のさじはわしが落とした物だ。だが、さじは七本あったはず。どうして六本しかないのだ?」

「確實,這銀湯匙係𠊎跌忒个。毋過應該有七支正著。仰會正六支湯匙?」

「そんな事を言われても困ります。わたしが拾ったのは、六本だけです」

你恁樣講,𠊎當為難,𠊎拈著个斯六支定。」


「それなら、残りの一本はお前が取ったに違いない。どうしても返さないと言うのなら、その一本分の代金を払って貰おう!」

「該伸著該支你拿去無毋著。若係講你毋還,該你就愛賠錢!」


そう言って仁兵衛は、高いお金を要求したのです。

恁樣講个仁兵衛要求當高个價錢。


「そんな。わたしには、そんなお金はありません。せっかくここまで届けに来たのだから、受け取って下さいよ」

多,𠊎多錢,𠊎專工送來,所以請拿轉去。

いや、受れん!代金わないのなら、残りの一本!」
「毋愛,𠊎毋接受!若係你毋賠錢,就摎該支還𠊎!」


五郎
さんはすっかりってしまいました
五郎這下嗄無結無煞。


そこで奉行所へ訴え出ると、幸運な事に、名裁きで有名な大岡越前がじきじきに裁いてくれるというです。

所以就去奉行所要求裁決,幸運个係,由當出名个大岡越前親身來審判。


五郎と仁兵衛が、お白州
(おしらす裁判を受ける場所)に入ると、越前が尋ねました。
五郎摎仁兵衛行入審判所後,越前詢問講:


「五郎に尋ねるが、お前が拾った銀のさじは、六本しか無かったのだな?」

「問五郎,你拈著个銀湯匙斯六支定係無?」


「はい、お奉行さまにお預けした通り、六本だけです」

「係,就係交分你該六支,斯該六支定。」

「では、仁兵衛に尋ねる。お前が落としたのは、七本であったな」

「過後,問仁兵衛,你跌忒个,有七支。」


「はい、七本です。それなのにこの男は六本しか返さず、一本をネコババしたのです。そこで仕方なく、お金でゆずってやると言っても承知しないのです」

「係,有七支,但係這個細倈人斯還𠊎六支,挾私胲挾忒一支,所以,無法度喊佢賠錢佢也毋肯。」


仁兵衛が、胸を張って言いました。

仁兵衛挺胸講:


「そんな、ネコババなんてしていません!お奉行さま、銀のさじは六本しかなかったのです。
じてください!」
「挾私胲!奉行大人,銀湯匙斯六支定。請相信𠊎!」

「何
この盗人!品物さないのなら代金。当然だろう!」
「你仰恁樣講,這個賊仔!東西若係毋還,該就賠錢。天公地當!」


おら、盗人じゃねえ!」
𠊎,毋係賊仔!」

いいやこの盗人!」
「毋係,這個賊仔!」


二人
はとうとう、言いをめました
兩儕開始相詏嘴。


二人の態度を見ていると、越前には仁兵衛がうそをついているのは明らかなのですが、証拠がない以上、うそと決めつけるわけにはいきません。

看著兩儕个態度,越前認為仁兵衛當明顯係講耗漦,毋過無證據,做毋得判定佢講花舌。

しばらく考えていた越前は、二人に言いました。

考慮一段時間个越前,摎兩儕講:


ともかく、二人ともいいかたちはわたしにきをめてどんな裁きであろ

うと、反論する事は許さぬぞ」
「無論仰般,兩儕都恬恬!做得無你兜來尋𠊎審判个,𠊎做麼个判決不准反駁。」

「はい」

「好。」


「はい」

「好。」


五郎は、もしかすると自分がお金を支払わなければならないと思うと、心配でたまりません。

五郎想著萬一分佢判愛賠錢時節,斯愁勞博激。

一方、仁衛兵の方は、最悪でも落とした銀のさじが自分の元に戻ってくるし、うまくいけば余分にお金をもらえると余裕です。

另外一方面,仁兵衛,在最壞个情況下至少拿轉跌忒个銀湯匙,較好个情況無定加拈一兜錢。

越前は、そんな二人にこう言いました。

越前摎這兩個人講:


「仁兵衛が落としたのは、『七本のさじ』。五郎が拾ったのは、『六本のさじ』である。よって、五郎の拾ったさじは、仁兵衛の物ではない。仁兵衛は、自分が落とした『七本のさじ』が出てくるまで、待つがよい。そして五郎の拾った『六本のさじ』は、持ち主が現れないものとして、拾った五郎の物とする。よいな!」

「仁兵衛跌忒个係『七支湯匙』。五郎拈著个係『六支湯匙』。所以五郎拈著个湯匙毋係仁兵衛个。仁兵衛,應該直直等跌忒个『七支湯匙』走出來為止,然後五郎拈著个『六支湯匙』,因為失主無出現,摎佢分拈著个人五郎,好了!」


それを聞いて、仁兵衛はびっくりして、

聽著恁樣,仁兵衛著驚,


「そ、そんな馬鹿な。お奉行さま、あのさじはわたしの物です。実はあのさじは、最初から六本・・・」

と、言いかけて、慌てて口を押さえました。
「該、該戇當。奉行大人,該兜湯匙係𠊎个。事實上,該兜湯匙從頭開始就係六支...」
佢煞煞揞等嘴。

それを見て、越前は怖い顔で仁兵衛に言いました。

看著該情形个越前,用一張當得人驚个面色摎仁兵衛講:


「ほほう。最初から六本と言う事なら、あのさじはお前に返してやろう。しかし、おかみに嘘をついた罪として島流しを命ずるが、それでも良いのだな!」

hoho,若係你從一開始就講六支,該湯匙就會還你。毋過因為你對官府講花蓼愛判流放外島个罪,但係恁樣乜好!」


「・・・いえ。わたしの落としたのは七本のさじなので、五郎が拾った六本のさじは、五郎の物です」

「...毋係。𠊎跌忒个係七支湯匙,拈著个係六支湯匙,係五郎个東西。」

仁兵衛は、泣きそうな声でそう言いました。

仁兵衛用噭樣个聲講:


越前は、そんな仁兵衛をにらみつけると、にっこり笑って五郎に言いました。

越前睞一下仁兵衛,笑咪咪對五郎講:


「五郎よ。聞いての通り、お前が拾った六本のさじは仁兵衛の物ではない。落とし主が分からぬゆえ、遠慮なく貰って帰るがよいぞ」

「五郎啊,像你所聽著恁樣,您拈著个係六支湯匙毋係仁兵衛个。因為毋知麼儕係跌忒个人,所以請毋使細義拿轉去。」


「はい。お奉行さま。名裁きをありがとうございます」

「好,奉行大人。感謝你个判決。」

こうして六本の銀のさじは正式に五郎の物となり、五郎は大喜びで家に帰って行ったのです。

因為恁樣,六支銀湯匙正式變五郎个,五郎非常歡喜行轉屋下。


「うむ。これにて、一件落着!」

m11𠊎又辦好,一件事情了!」

 

おしまい
煞咧

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