福娘童話集 > きょうの日本昔話 > 9月の日本昔話 > 歯をボロボロにされた鬼
9月2日の日本の昔話
歯をボロボロにされた鬼
牙齒㪐淨淨个鬼
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
むかしむかし、ある山奥に、一匹の鬼が住んでいました。
頭擺頭擺,某某深山,有一個鬼戴在該。
鬼は毎日のようにふもとの村にやってきて、畑を荒らし回り、家にある食べ物を手当たりしだいに食べるのです。
鬼逐日會去山下村莊,爽人个園,偷人个食物。
「そのうちに、わしらも殺されてしまうかもしれない」
「有一日,會摎𠊎俚㓾忒乜無一定。」
「なんとかしないと、村は全滅だ」
「若係毋先做預防,完村會分佢滅忒。」
村の人たちはすっかり困ってしまい、畑仕事も手につきません。
村民感覺非常無結煞,連園事都毋想做。
そこで寺の和尚(おしょう)さんに相談して、鬼が来ると寺へ連れて行き、酒を飲ませてごちそうを食べさせることにしたのです。
所以,去尋廟个和尚師父參詳,決定鬼來時節,渡去廟,請佢食東西、啉酒。
おかげで畑は荒らされなくなりましたが、今度はごちそう作りが大変です。
好得恁樣,田園正無爽著,但係,這擺个料理準備非常麻煩。
村人たちが交代でごちそうを作り、酒を用意しなくていけないのです。
村民愛輪流準備料理摎酒。
鬼は毎日寺へやってきて、大酒を飲み、腹いっぱいごちそうを食べたあと、本堂で大の字に寝て、ものすごいいびきをかきます。
鬼逐日都會來廟,大口啉酒、大口食料理,食到飽𩜰𩜰後,雙手雙腳開開像隻大字形睡在大殿,ku11ku11滾牽覺。
それを見ていると、なさけないやらくやしいやら、いっそひと思いに殺してやろうとしましたが、
看著該,毋單淨不服又毋甘願,還想一下㓾分佢死。
「まて、まて。いくら鬼とて、命あるものを殺すわけにはいかない。わしにまかせておけ」
「等下,等下。不管係麼个鬼,有生命个東西做毋得㓾死,交分𠊎。」
と、和尚さんが言うので、村人たちは何とかがまんしていました。
因為和尚師父恁樣講,村民仰般乜愛忍耐。
ある日の事、和尚さんが、
有一日,和尚師父講:
「今日は鬼に出すごちそうに、白い石を四角に切った物と、竹の根を輪切りにした物を用意するように」と、言いました。
「今晡日出分鬼个料理,愛準備一垤白石頭切做四角形摎一垤切片个竹根。」
鬼はいつものように地ひびきをたてながら、寺にやってきました。
鬼摎平常共樣,bin11 biang11滾來到廟。
「さあ、どうぞどうぞ」
「請。」
和尚さんは鬼を本堂に案内すると、大きなおぜんの前に座らせて、
和尚師父摎鬼渡到大殿,坐在當豐沛个桌席前,
「今日は酒のさかなに、とうふと竹の子を用意しました」と、言って、
講:「今晡日,準備有豆腐、竹筍分你傍酒。」
白い四角の石と竹の根を輪切りにした物を出しました。
拿出一垤白色四角形个石頭摎切圈个竹根。
それから自分のおぜんの上には、本物のとうふと竹の子の煮物を置いたのです。
過後,自家个飯桌頂放正經个豆腐摎竹筍。
「ほう、これはうまそうだ」
「哦,看起來當好食樣。」
鬼はいつものように酒を飲み、とうふと言われた白い石をほおばりました。
鬼摎往常共樣啉酒,大口食白石頭做个豆腐。
ガシン!
gashin!
ところが、その石の固い事。
毋過,石頭硬確確。
必死になってかみくだいたら、鬼の歯がボロボロになってしまいました。
盡命出力嚼,鬼个牙齒搭搭跌。
「なんて、固いとうふじゃ。・・・うん?」
「仰會恁硬个豆腐...m24?」
ふと和尚さんの方を見てみると、さもおいしそうにとうふを食べています。
鬼看一下和尚師父該片,豆腐確實看起來當好食樣。
和尚さんは続いて、竹の子の煮物を口に入れると、これまたおいしそうに食べました。
和尚師父續等摎煮好个竹筍放落嘴肚,這又乜當好食樣在該食。
鬼も同じように竹の根の輪切りを口に入れましたが、固くて固くてやっぱり歯がたちません。
鬼也用共樣方式摎切圈个竹根放落嘴肚,因為昶硬牙齒當毋著。
それでも人間に負けてなるものかと思い切ってかみくだいたので、残っている歯もボロボロになってしまいました。
雖然恁樣,想著愛輸分人嘎,所以決定嚼綿來,伸著个牙齒一支一支㪐淨淨。
さすがの鬼もビックリして、和尚さんに言いました。
連鬼乜著驚,摎和尚講︰
「こんな固い物を、よく平気で食べられるもんだ」
「這恁硬个東西做得像無事樣食落去。」
すると和尚さんは、にっこり笑って言いました。
和尚師父笑咪咪講︰
「なあに、人間の歯は鉄より固く、何だってかみくだく事が出来る。なんなら、お前さんの腕にかみついてみようか?」
「麼个,人類个牙齒比鐵較硬,麼个較硬个東西乜做得嚼綿,仰般,手髀愛分𠊎試咬看無?」
「と、とんでもない!」
「正無愛!」
鬼は、あわてて手をふりました。
鬼煞煞搖手。
「そればかりじゃない。地面だってひっくり返す事が出来るぞ。あれを見てみろ」
「毋只恁樣,地泥都做得貶轉來,看該片。」
和尚さんが、麦畑(むぎばたけ)の方を指さしました。
和尚師父用手比麥田。
見ると昨日まで黄色く実っていた麦は一本もなく、畑はすっかりたがやされて黒々とした土になっていました。
看到,昨晡日以前黃訌訌个小麥穗一支無伸,田地總下犁忒了,變做一片黑泥。
(なるほど、人間というのは恐ろしい力を持っているものだ。そうとは知らずに畑を荒らしたり、
ごちそうを食べていたりしていたが、もしかするとわしを安心させて捕まえるためかもしれないぞ)
(有影,人類有當得人驚个力量。麼个都毋知緊摎田爽忒,緊吃等豐沛,但係,可能用這安俚个心後,正捉起來也無一定。)
そう思うと鬼は急に怖くなり、そのまま山奥に逃げ込むと二度と姿を見せることはなかったという事です。
恁樣想个時節,鬼忽然間變到當驚樣,瀉到山頂去,毋識再過看著。
おしまい
煞咧
|