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12月7日の日本の昔話
大きな運と小さな運
運命好壞
福妹日本童話集 (臺灣客語.海陸腔) 翻譯:鄧文政(ten33 vun55 zhin11)
※本作品は、読者からの投稿作品です。 投稿希望は、メールをお送りください。→連絡先
投稿者 「ちょこもち」 ちょこもち
むかしむかし、ある山奥のほら穴に、ぐひんさんが住んでいました。
頭擺頭擺,一隻深山山窿肚,戴一條古興(guhin)先生。
ぐひんさんとは、テングの事です。
古興(guhin)先生係天狗。
このぐひんさんの占いはとても良く当たると評判なので、もうすぐ子どもが生まれる木兵衛(もくべえ)と賢二郎(けんじろう)が生まれる子どもの運を占ってもらいました。
因此,聽講古興(guhin)先生卜卦非常準,黏時會降細人仔个木兵衛摎賢二郎,請佢摎吂出世个細人仔算下命。
「オン!オン!山の神、地の神、天の神、木兵衛と賢二郎の子のぶにをお教えたまえー!」
「on!on!山神、地神、天神、請摎木兵衛、賢二郎細人仔个命底(ぶに)講分兩儕聽。」
ぐひんさんは大声で呪文(じゅもん)を唱えると、まずは木兵衛に言いました。
古興(guhin)先生大聲念咒,先摎木兵衛講︰
「神のおおせられるには、お前には竹三本のぶにの子が生まれるそうだ」
「神明講你會降三支竹命底(ぶに)个細人仔。」
「竹三本の、ぶに?」
「三支竹个,命底(ぶに)?」
「そうじゃあ。人には生まれながらにそなわった、運というものがある。それすなわち、ぶにじゃ」
「係啊,人逐儕都有命肚帶來个運,該就係命底(ぶに)。」
「と、言うと、おらの子には、たった竹三本の運しかそなわらんのか?」
照恁樣講,吾个細人仔斯帶來三支竹个命底(ぶに)係無?
木兵衛は、がっかりです。
木兵衛非常失望。
ぐひんさんは、次に賢二郎に言いました。
古興(guhin)先生續等摎賢二郎講︰
「お前のところには、長者(ちょうじゃ)のぶにの子が生まれる。お前の子は、長者になるさだめじゃあ」
「你該片降个細人仔斯帶來有錢人个命底(ぶに)。若細人仔定著會變有錢人。」
「貧乏なおらの子が、長者にねえ」
「𠊎窮苦人个細人仔毋會係有錢人。」
ぐひんさんの占いを聞いて、二人は村に帰りました。
聽煞古興(guhin)先生算命,兩儕就轉去村莊。
それからしばらくして、二人の家に子どもが生まれました。
過一下仔,兩儕屋下就降出嬰兒仔。
「玉の様な、男の子じゃ」
「像玉樣恁靚个倈仔。」
「うちは、女の子じゃ」
「屋下係妹仔。」
どちらも元気な子どもで、二人は手を取り合って喜びました。
哪個乜當有精神,兩儕手牽手非常歡喜。
木兵衛の子どもは吾作(ごさく)、賢二郎の子どもはお紗希(おさき)と名付けられ、二人は病気もせずにスクスクと育ちました。
木兵衛个倈仔安到吾作(gosaku),賢二郎个妹仔安到御紗希(osaki),兩儕無麼个病痛就畜大了。
ある日の事、木兵衛と賢二郎が畑仕事をしているところへ、吾作とお紗希がにぎり飯を持って来ました。
某日,木兵衛摎賢二郎上山做事,吾作摎御紗希拿撚飯糰來。
「おとう、昼飯じゃあ」
「阿爸,好食晝了。」
「みんなで、一緒に食べようよ」
「大家共下來食。」
「賢二郎、そうするか」
「賢二郎,恁樣好無?」
「おうおう、そうすべえ」
「哦,哦,斯恁樣。」
四人はあぜ道にならんで、にぎり飯を食べました。
四儕人在路脣排等,食撚飯糰。
ムシャムシャ・・・、ガチン!
大口大口食...,Gachin!
木兵衛が食べていたにぎり飯の中に、小さな石が入っていました。
木兵衛食个撚飯糰裡肚,有隻細石牯。
「なんや、石なぞ入れおって。・・・ペっ!」
「仰會放石牯。・・・呸!」
木兵衛は小石を、ご飯粒ごと吐き出しました。
木兵衛摎石牯摎飯糝做下呸出來。
すると吾作も親の真似をして、
過後,吾作乜學厥爸恁樣做。
「ぺっ、ペっ、ペっ」
と、ご飯粒を吐き出しました。
「呸!呸!呸!」
摎飯糝呸出來。
それを見た賢二郎は、木兵衛に言いました。
看著該个賢二郎摎木兵衛講︰
「ああ、もったいない事をして。石だけを、吐き出したらよかろうに」
「啊,還打爽,摎石牯呸出來就好了。」
すると木兵衛は、笑いながら言いました。
木兵衛一頭笑一頭講︰
「石だけを選ぶなんて、けちくさいわい。
「斯選石牯,昶齧察了,
おらは、けちくさい事は大嫌いじゃ。
𠊎最惱齧察个事。
賢二郎どんは、よくよくの貧乏性じゃのう。
賢二郎實在係窮苦命。
アハハハハハッ」
阿哈哈哈哈哈。」
「そうは言っても、おらはどうももったいない事が出来んのや。なあ、お紗希」
「就算係恁樣,𠊎俚乜做毋得恁浪費,哪,御紗希。」
「うん!」
「m11!」
それから何年か過ぎて、吾作は町の竹屋で修行をして古いおけを修理する輪がけの職人になりました。
再過幾年,吾作在街路竹仔店學手藝,做修理舊桶箍个師傅。
お紗希は、隣村で働く事になりました。
御紗希在隔壁村食頭路。
竹職人になって村に帰って来た吾作に、木兵衛はうれしそうに言いました。
木兵衛當歡喜,對做竹師傅、轉到村莊个吾作講︰
「よしよし、それだけ技術を身につけたら立派なものや。ぐひんさんには竹三本のぶにと言われたが、がんばれば竹百本、うんにゃ、竹千本の大金持ちにだってなれるわい」
「還好、還好,斯愛有技術你就會成功,古興(guhin)先生講過三支竹个命底(ぶに),較煞猛兜百支竹,好運兜,會變千支竹个大有錢人。」
「ああ、がんばるぞ」
「打拚兜哦!」
こうして吾作は村々をまわって輪がえの仕事をしましたが、しかしいくら働いても輪がえはそれほどお金になりません。
斯恁樣,吾作去巡迴各村,修理舊桶箍,毋過,仰般煞猛做乜賺無麼个錢。
「ああ、輪がえというのは、つまらん仕事じゃあ」
「啊,整桶箍這事,實在無麼个價值。」
そんなある日、隣村まで足をのばした吾作は、長者屋敷の前で呼び止められました。
某日,腳跡擴大到隔壁村个吾作,在有錢人大座屋頭前,分人喊頓恬。
「輪がえ屋さん、おけの輪がえをお願いします」
「整桶箍頭家,拜託摎𠊎整桶箍。」
お手伝いの娘が、こわれたおけを持って屋敷から出て来ました。
使女就對大座屋拿出壞忒个桶。
「へい、ありがとうございます」
「hei,承蒙你。」
吾作は輪がえをしながら、お手伝いの娘にたずねました。
吾作一頭整桶箍一頭問使女。
「ずいぶんと、使い込んだおけですね。しかし長者さまなら輪がえなんぞしないで、新しいおけを買った方がはやいんじゃないですか?」
「用當慣勢个桶呢,毋過,有錢人若係莫整,買隻新个較遽無係嘎?」
「はい。以前はそうでしたが、新しい若奥さまが来られてから、使える物は直して使う様になったんです。でもそのおかげで、若奥さまが来られてから屋敷がずいぶんと大きくなりましたよ」
「係,頭過係恁樣,毋過,新後生頭家娘來以後,還做得用个東西愛整好來用,打幫這,後生頭家娘來以後,大座屋越來越發。」
「へえー、そんなものですかね。わたしはどうも、けちくさいのが苦手で」
「hee24,係恁樣哦,𠊎非常驚對付這種齧察人。」
するとそこへ長者の若奥さまが通りかかり、輪がえをしている吾作を見てなつかしそうに言いました。
過後,有錢人个後生頭家娘經過,看著當當整桶箍个吾作,就當懷念个講︰
「あれぇ、あんた、吾作さんやないの? ほら、あたしよ。小さい頃によく遊んだ、隣の」
「噯、你,毋係吾作嘎?你看,𠊎哊,細細時節戴隔壁个細人仔伴。」
吾作は若奥さまの顔を見て、びっくりしました。
吾作看著後生頭家娘,著下驚。
「ありゃあ!お紗希ちゃんでねえか。こ、ここの、奥さまになられたのでござりまするか?」
「該!係御紗希無?這,這位个頭家娘係無?」
「ええ。あとでにぎり飯をつくってあげるから、待っとって」
「係,等下撚幾隻飯糰分你,等一下。」
お紗希は台所に行くと、さっそくにぎり飯をつくりました。
御紗希去到灶下後,煞煞撚飯糰。
そして長者の嫁になった自分の幸せを吾作にも分けてあげたいと思い、にぎり飯の中に小判を一枚ずつ入れたのです。
想愛摎自家嫁分有錢人得著个福氣分兜吾作,就在逐隻飯糰肚放一隻金幣。
この小判は、お紗希が何年もかかってためた物でした。
這兜金幣係御紗希幾下年長下來个。
輪がえを終えた吾作は、川岸へ行ってお紗希からもらったにぎり飯を食べる事にしました。
整好桶箍个吾作,跈河壩脣緊行,緊食御紗希分佢个飯糰。
「ほう、こりゃうまそうじゃ。さすがは、長者さま。飯のつやが違うわい」
「呵!還好食,有錢人斯係有錢人,連飯色目都摎人無共樣。」
そしてにぎり飯を口に入れると、
カチン!
と、歯にかたい物があたりました。
摎飯糰放落嘴肚時節,
kachin!
聲,牙齒咬著硬个東西。
「ペッ!なんや、えらい大きな石が入っとるぞ」
「呸!麼个,放隻恁大个石牯。」
吾作はにぎり飯を川の中に吐き出すと、二つ目のにぎり飯を口に入れました。
カチン!
吾作摎飯糰呸落河壩肚,摎第二隻飯糰放落嘴肚。
kachin!
「これもか。ペッ!」
「這隻乜恁樣嘎,呸!」
三つ目も。
第三隻乜。
カチン!
kachin!
「なんや、これもか。ペッ!」
「麼个,這隻乜恁樣嘎,呸!」
四つ目も、五つ目も。
第四隻乜、第五隻乜。
カチン!カチン!
kachin!kachin!
「何じゃ、このにぎり飯は? どれもこれも、みんな石が入っとるやないか」
「這飯糰係麼个?這隻乜有,該隻乜有,逐隻都有嘎?」
そして最後の一つも、やはりカチンときました。
最尾一隻乜kachin!
吾作はこれも川に吐きすてようとして、ふとにぎり飯を割ってみました。
吾作也想愛摎佢呸落河壩肚,突然間摎飯糰擘開來看。
「長者の家の飯には、どんな石が入っとるんじゃ?・・・ややっ、これは!」
「有錢人屋下个飯會放麼个石牯?・・・唉哦,這!」
にぎり飯の中から出て来た物は、石ではなく小判です。
撚飯糰裡肚走出來个東西毋係石牯係金幣。
「し、しもうた。前に入っていたのも、小判やったんか」
「壞,壞蹄了,頭先放个也係金幣嘎?」
お紗希が心を込めたおくり物は、深い川の底に沈んでしまいました。
御紗希恁有心送个東西,㧒到深深个河壩底。
この話を聞いて、木兵衛は吾作をしかりました。
聽著這故事,木兵衛罵吾作︰
「なんで初めにカチンときた時に、中を確かめなかったんや! そうすりゃ、六枚の小判が手に入ったのに!」
「仰會最先聽著kachin時節,毋確認一下!若係有,該六枚金幣這下到手了!」
「けど、石だけを選んで吐き出すなんて、そんなけちくさい事はおとうも嫌いやろ? やっぱりおらには、運がないんや」
「毋過,單淨揀石牯呸出來,這種齧察个事阿爸乜當惱咩?總講𠊎俚無該運。」
その言葉を聞いて、木兵衛はぐひんさんの言葉を思い出しました。
聽著該話,木兵衛想起古興(guhin)先生講个話。
「ぐひんさんの言う通り、お紗希は長者の嫁になった。やはり吾作には、竹三本のぶにしかないのか・・・」
「照古興(guhin)先生講个話,御紗希會做有錢人个餔娘,總講吾作斯有三支竹个命底・・・」
木兵衛ががっかりしていると、どこからともなくぐひんさんが現れて言いました。
木兵衛當失望時節,古興(guhin)先生忽然間走出來。
「木兵衛よ、それは違うぞ。
「木兵衛啊,毋係恁樣哦,
お紗希が長者の嫁になれたのは、物を大切にする良いおなごだったからじゃ。
御紗希嫁分有錢人係因為姖係當儆惜東西个細妹仔。
いくら良いぶにを持っていても、それを生かせん者もおる。
不管你有幾好个命底,有人乜毋會用著。
反対に小さなぶにしかなくても、大きな運をつかむ者もおる。
講到轉來,命底細个人,成時堵著好運乜有。
ぶにとは努力しだいで、どうとでも変わる物じゃ。
命底這東西會隨努力程度改變。
長者になっても物を大切にするお紗希を見習えば、お前たちにも運がつかめるだろう」
若係你學習御紗希,嫁分有錢人,還係當儆惜東西,你乜會堵著好運敢?」
それからというもの木兵衛と吾作は物を大切にする様になり、やがて竹千本の山を持つ長者になったそうです。
自該擺以後,木兵衛摎吾作當儆惜東西,聽講,無幾久就變成有千支竹山个有錢人。
おしまい
煞咧
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