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第 121話
カッパの証文
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むかしむかし、若狭の国(わかさのくに→福井県)に、ご先祖がカッパの証文(しょうもん)をもらったという家がありました。
これは、そのカッパの証文のお話です。
ある日の夕方、おじいさんはウシに水あびをさせてやろうと、ウシを海へ連れていきました。
ところが水あびが好きなはずのウシが、その日はどうしたわけか海に入ろうとしません。
おじいさんが押しても引っぱっても、ウシは動こうとしないのです。
「どうしたんだ?」
おじいさんは仕方なく波うちぎわでおけに水をくんで、ウシの体をきれいに洗ってやりました。
すると、ウシが突然、
「モー、モー」
と、泣き出し、何かを追い払うように後ろ足をけりはじめました。
「何をしているんだ?」
おじいさんがウシの後ろ足を見ると、五才ぐらいの子どもがウシの後ろ足をひっぱって、海に連れて行こうとしていたのです。
「何者だ!」
おじいさんは子どもをつかまえると、なわでぐるぐるまきにしてしまいました。
子どもはおじいさんに、申し訳なさそうに言いました。
「すみません。わたしは、この海に住むカッパです。京都の祇園祭(ぎおんまつり)には、人間や動物の尻の肉をおそなえしなくてはなりません。それでこのウシの尻の肉をちょうだいしようとしたのです」
おじいさんは、それを聞いてビックリです。
「わしの大事なウシの尻を、何て言うやつだ!」
おじいさんは大きなげんこつを、カッパに何発もくらわしました。
「ごめん、ごめん。ごめんなさい! もうしません。たすけて!」
カッパは、悲鳴をあげました。
それを聞いたおじいさんは、
「本当か? 本当に、人間や動物に悪さをしないんだな?」
と、言うと、カッパはこっくりと頭を下げました。
「よし、証拠(しょうこ)に、証文(しょうもん)を書いてもらおうか」
するとカッパは、おじいさんに言いました。
「はい、明日の朝までに書いて、おじいさんの家までお届けします」
カッパが約束すると、おじいさんはカッパのなわをといてやりました。
次の日の朝、おじいさんは目覚めるとすぐに外へ出てみました。
すると戸口にはカッパの証文と、取れたて魚がたくさんおいてあったという事です。
おしまい
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