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第 130話
天へ飛ばされた男の子
秋田県の民話 → 秋田県情報
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むかしむかし、とてもイタズラ好きな男の子がいました。
お父さんやお母さんがいくらしかっても、男の子はイタズラをやめません。
ある日の事、男の子の家ではおけ屋をよんで、ふろおけの修理(しゅうり)をしてもらう事になりました。
ところが男の子はおけの修理の道具をいじったり、おけをしばっている竹のたがをたたいたりと、いつものようにイタズラをはじめました。
「こら! あぶないから、はなれていろ!」
おけ屋がいくら言っても、男の子は聞きません。
そのうちにおけのたががパチンとはずれて、男の子を空高くはじき飛ばされてしまったのです。
「大変だ! 男の子が空に飛んで行ってしまったぞ!」
それを聞いて、お父さんとお母さんがあわててやって来ました。
でも空へ消えてしまっては、探しに行く事も出来ません。
お父さんもお母さんは、一日中空をながめて泣いていました。
さて、天まで飛ばされた男の子が雲の上で泣いていると、美しい娘さんがやって来ました。
「坊や、どうして泣いているの?」
そこで男の子は、おけのたがをイタズラしていて飛ばされた事を正直に話しました。
「やれやれ、人の言う事を聞かないでイタズラばかりするから、こんなところへ飛ばされるのですよ。
自分のした事です、ここにずっといなさい」
「いやだ、いやだ。家に帰りたいよう」
「それなら、これからは人の言う事を聞きますか?」
「聞くよ、聞くよ」
「よろしい。それならわたしが、家にもどれるようにしてあげましょう」
娘さんは男の子を雲の上の家に連れて行くと、ごはんを食べさせてから大きなカサを差し出しました。
「このカサにつかまって、地上へおりなさい。このカサは、カサのえを向けた方におりていきます」
男の子はさっそくカサにつかまり、雲から飛び降りました。
するとカサは風に乗って、フワリフワリと下におりていきます。
どんどんおりると、やがて自分の家が見えてきました。
男の子は娘さんに教えてもらったように、カサのえを家の方に向けました。
家の前では、みんなが手を振っています。
「あっ、父ちゃんと母ちゃんだ!」
よく見るとおけ屋もいますし、近所の人たちもいます。
みんな男の子を心配して、集まってくれていたのです。
カサはどんどんさがっていき、男の子は無事に地上へおりました。
するとお父さんがかけて来て、男の子の頭をコツンとたたきました。
そしてうれしそうに、男の子を抱き上げました。
「こいつめ! 心配させやがって」
お母さんもかけ寄ってきて、男の子を抱きしめました。
おけ屋も近所の人たちも集まってきて、
「よかった、よかった」
と、みんな口々に言いました。
その日から男の子はイタズラをやめて、人の言う事をよく聞くよい子になりました。
おしまい
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