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第 166話

ネズミの前歯が、二本だけになったわけ

ネズミの前歯が、二本だけになったわけ
新潟県の民話新潟県情報

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 むかしむかし、ネズミが原っぱで食べ物を探していると、イタチがやってきました。
「やあ、ネズミくん、何か食べ物は見つかったかい?」
「やあ、イタチさんか。いいや、近ごろはごちそうが少なくてね」
「それなら、二人でこの草むらを耕して、アワでもつくらないかい?」
「いいねえ。そいつはいい考えだ」
 そこでネズミとイタチは、さっそく草むらを耕して、アワの種をまきました。
 やがてアワの芽が出て、どんどん大きくなりました。
 イタチはよろこんで、ネズミの家に行きました。
「ネズミくん、ネズミくん、アワもだいぶ大きくなってきたようだが、邪魔な雑草も多いんだ。一緒に草取りに行こうよ」
 ところがネズミは、
「ごめん。おら、かぜをひいてしまったから、イタチさん一人で行ってくれないか?」
と、いうのです。
「そうか。かぜなら仕方がないな。お大事に」
 気のいいイタチは一人で畑に行って、せっせと草取りをしました。
 そのうちに、アワがのびてくきになりました。
 そこでイタチは、またネズミの家に行き、
「ネズミくん、ネズミくん、そろそろ土寄せに行こうよ」
と、言いました。
 土寄せとは、作物の根元に土を盛ることで、作物を丈夫に育てるために行うのです。
 ところがネズミは、
「ごめん。実は子どもの具合が悪くてね。すまないがイタチさん、一人で行ってくれないか?」
と、言いました。
「そうか。子どもの病気じゃあ、仕方がないね。お大事に」
 イタチはまた一人で畑に行き、アワの根元に土を寄せたり、こやしを入れたりして一生懸命働きました。
 さて、何ヶ月かすぎて、アワはキツネのしっぽのような見事な穂をつけました。
(さあ、もうすぐ取り入れができるぞ。取り入れたら、アワ餅をつくるんだ)
 だんだん重くなっていく穂を見ながら、イタチは毎日にこにこ顔です。
 ところがある日、畑にきてみると、なんとアワの穂が、一つ残らずきれいになくなっているではありませんか。
 イタチはびっくりして、ネズミの家に行きました。
「大変だよ! アワの穂を盗まれよ」
「えっ? アワの穂が盗まれたって? なるほど、それは大変だな」
 しかしネズミには、ちっともおどろいた様子がありません。
 実はネズミが夜の間に、こっそりアワの穂を持ち帰って、それでアワ餅をつくって子どもたちと一緒に食べてしまったのです。
「どうしよう?」
 イタチが、がっかりして言いました。
「まあ、盗まれたものは仕方がないさ。来年、またつくればいいさ」
 ネズミが、なぐさめるように言いました。
 するとそこへ、ネズミの子どもがやってきていいました。
「とうちゃん、昨日のアワ餅を、もっとちょうだい」
 それを聞いたネズミは、大あわてです。
「なっ、なにをいう。アワ餅なんて、あるわけないだろう」
 しかし、それを聞いたイタチは、ネズミをにらみました。
「さては、お前が盗んだな。人にばかり働かせておいて、出来たアワを一人占めするなんて、とんでもないやつだ。こらしめてやる!」
 怒ったイタチは、ネズミの歯を次々と引き抜いてしまいました。
 それでも、気のいいイタチは、
(待てよ、全部抜いてしまっては、何も食えなくなってしまうな)
と、前歯二本だけは、抜くのをかんべんしてやりました。
 この時からです、ネズミの歯が前歯二本だけになったのは。

おしまい

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