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第 240話
におうか?
長野県の民話→ 長野県情報
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むかしむかし、あるお寺に仁王門(におうもん)があり、その中に大きな仁王さまが立っていました。
仁王さまとは、悪者が入ってくるのを防ぐ門番です。
門番の仁王さまは昼も夜も一日中、仁王門の中で立ち続けているので、退屈で退屈で仕方がありません。
ある晩、仁王さまはこんな事を考えました。
「朝から晩まで立ちっぱなしでは、面白くない。昼間はともかく夜は誰も来ないから、ちょっとぐらいなら寺の周りを散歩してもいいだろう」
そして仁王さまは仁王門から出ると、お寺の周りを散歩したのです。
「おおっ。こりゃ、ええ気持ちだ」
それから仁王さまは毎晩出歩くようになり、やがてお寺の周りだけでは物足りず、だんだん遠くの方まで出かけるようになりました。
そんなある晩の事、仁王さまは一軒だけ灯りがともっている家にやって来ました。
「真夜中だというのに、何をしているのだ?」
仁王さまが窓障子(まどしょうじ)の破れ穴から中をのぞいて見ると、おばあさんが糸車をくるくると回していました。
「ふむ、何やら回しておるが、あれは、何じゃろうか?」
仁王さまが不思議そうにながめていると、おばあさんは糸車を回しながらお尻をひょいと持ち上げて、
ブーーッ!
と、大きなおならをしました。
「げほっ、げほっ、何だこれは」
そのあまりの臭さに仁王さまが鼻をつまみながら咳き込むと、その声に気づいたおばあさんは村人が来たのだと思って家の外に言いました。
「匂(にお)うか?」
(なに!? 見つかったか!? これはまずい!)
仁王さまは『匂うか?』を『仁王か?』と言ったのだと勘違いをして、あわてて仁王門に逃げ帰りました。
そして夜になっても、二度と仁王門から出なかったそうです。
おしまい
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