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      第 254話 
          
          
         
段右衛門(だんえもん)のとんち 
鹿児島県の民話 → 鹿児島県情報 
       
      ・日本語 ・日本語&中国語 
      
       むかしむかし、徳留段右衛門(とくとめだんえもん)という、とんちの上手な侍がいました。 
         
 ある日の事、用事で鹿児島の町まで出かけた段右衛門は、びんつけ屋の前を通りかかりました。 
 びんつけとは、むかしの人が髪の毛の整えるのに使った油です。  
 店にならんだ黄色のびんつけ油を見た段右衛門は、ちょっとしたいたずらを思いつきました。 
「おい、びんつけ屋。 
 この黄色い物は、なんともうまそうではないか。 
 二、三升、売ってくれんか」 
「えっ? 二、三升もですか?!」 
「おや? 何かまずいのか?」 
「いえいえ。そんなに買ってもらえるのなら、たんとおまけを差し上げますで」 
 大量の注文に、すっかり気を良くした店の主人は笑顔で答えました。 
 すると段右衛門は、店の主人に両手を出して言いました。 
「それでは、そのおまけの分を先に食べてみるとするか。さあ、この手につけてくれんか」 
「へいへい。どうぞ、たんと食べてください」 
 店の主人は、段右衛門の両手にたっぷりとびんつけ油をつけてやりました。 
「ほほーっ。なんともうまそうじゃ。いただきまー・・・」 
 口を大きく開けた段右衛門は、急に思い出した様に言いました。 
「おおっ、そう言えば残念な事に、武士は立食いを固く禁じられておるんじゃ。 
 さて、どうしたものか。 
 ・・・そうだ、宿屋に戻ってから食べれば問題ない」 
 そう言って段右衛門は、さっさと行ってしまいました。 
 
 それからしばらくして店の主人は、 
「・・・ああっ! 代金代金!」 
と、あわてて段右衛門を追いかけましたが、もう段右衛門の姿はどこにもありませんでした。 
      おしまい 
         
       
        
 
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