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第 260話

大切な一文銭

川に落ちた一文銭
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 むかしむかし、葛飾(かつしか)に、青砥左衛門尉藤綱という殿さまがいました。

 ある日の事、青砥がお供を連れて川辺を歩いていると、一枚の一文銭を川に落としてしまったのです。
 一文銭は今の価値で二〜三十円ほどなので、川に落ちてしまったものをわざわざ拾う人はいません。
 ところが青砥は、お供たちに言いました。
「すまんが、川へ入って一文銭を探してくれないか」
「えっ? 一文銭をですか?」
「そうだ、一文銭だ」
「・・・はい、わかりました」
 お供たちは、
(たかが一文銭に、なんで川に入らなければならないんだ)
と、思いましたが、主人の命令だから仕方ありません。
 みんなは川へ入ると、落ちた一文銭を探し始めました。

 みんなは長い時間一文銭を探しましたが見つからず、やがて日が沈んで辺りが暗くなってきました。
 さすがに、お供たちも疲れ果てて言いました。
「殿、そろそろおあきらめになってはいかがでしょうか?」
 ところが青砥は、首を横に振ります。
「いや、一文銭といえども、粗末にしてはならん。
 すまんが町へ行って、松明(たいまつ)を買ってきてくれ。
 それからこの金で、出来るだけ多くの人を集めてくれ」
 そう言ってお供に財布を渡すと、青砥も川に入って一文銭を探し始めたのです。
 これには、お供たちもびっくりです。
「殿。たった一文銭の為に、こんな大金を使うのですか?
 これでは一文銭が見つかっても、損ではありませんか?」
 すると青砥は、お供たちに言いました。
「よいか。
 たとえ一文銭とはいえ、我らの金は領民たちが汗水たらして働いて納めた税から頂いた物だ。
 それを川に落としてしまったからあきらめるでは、税を納めてくれた領民たちに申しわけが立たぬ。
 拾わぬ一文銭は、川に落ちた石ころと同じだ。
 しかし一文銭を探すために町で使う金は、やがて領民たちの手に戻る。
 だからこうして金を使う事は、決して無駄にはならんのだ」

 結局、川に落ちた一文銭は見つかりませんでした。
 しかし、自分たちのお金は領民が納めてくれた税であり、わずかでも粗末にしてはいけないという青砥の教えは、この話を通じて全国の武士たちに広く伝わったのです。

おしまい

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