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第 296話
かけじくのウグイス
鹿児島県の民話 → 鹿児島県の情報
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むかしむかし、薩摩の国(さつまのくに→鹿児島県)に、とんち名人がいました。
そのとんち名人のうわさを聞いた殿さまが、とんち名人のとんちを試してやろうと、とんち名人を城へ呼びました。
とんち名人がやってくると、殿さまは立派な鳥かごを手に、こんな事を言いました。
「これ、あれを見よ」
殿さまが指さしたのは、床の間にかけてある、梅とウグイスを描いた見事なかけじくです。
「これは、ご立派なかけじくで」
「うむ、気に入ったか。では、あの梅の木にとまっているウグイスを、このかごの中に入れてはくれまいか」
殿さまの無茶な願いに、それを聞いていた家来たちもびっくりです。
(殿も、お人が悪い)
しかしとんち名人は、平気な顔で答えました。
「はい。かしこまりました。ではまず、そのかごをお貸し下され」
とんち名人は鳥かごを受け取ると、そっと、かけじくに近づきました。
とんち名人は本当にウグイスを取ろうと、真剣な表情です。
それを見た殿さまは、思わず
「くすっ」
と笑いました。
「しーっ、お静かに!」
とんち名人は、まじめな顔で鳥かごをかけじくに近づけました。
「さあ、殿。今でございます。必ず捕まえますから、反対側からウグイスを追い出してくだされ」
「なぬ!?」
これには、殿さまも困りました。
「まいった、まいった。さすがとんち名人じゃ」
これを見ていた家来たちも、とんち名人のとんちに、すっかり感心したということです。
おしまい
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