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第 311話
いたずらタヌキと木こり
秋田県の民話→ 秋田県情報
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むかしむかし、ある山奥に木こりの小屋がありました。
ある晩の事、木こりが寝ていると、
♪カンコン、カンコン
と、木を切る音が聞こえます。
(うん? 今ごろ木を切るはずがない。こりゃ、きっとタヌキのいたずらだな)
木こりがそう思っていると、今度は、
♪カンコン、カンコン
♪ガリガリ、ドッスン
と、木を切り倒す音がしました。
(ほう、タヌキのいたずらにしてはうまいもんだ。まるで本当に、木を切り倒しているみたいだ)
そこで木こりは戸を開けると、外に向かって言いました。
「おーい、タヌキ。なかなかうまいぞ」
さあ、それを聞いてタヌキは大喜びです。
それからは毎晩のように、
♪カンコン、カンコン
♪ガリガリ、ドッスン
と、音をたてました。
はじめはおもしろがっていた木こりも、毎晩こううるさくては眠る事が出来ません。
そこで木こりは、戸を開けてどなりました。
「やい、いいかげんにしろ! 毎晩毎晩うるさくしやがって、ちっとも眠れないじゃないか!」
ところがタヌキはやめるどころか、ますます調子にのって、今度は木を切り倒す音だけでなく、その木が転がる音まで出すようになりました。
♪カンコン、カンコン
♪ガリガリ、ドッスン
♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
次の晩になると、音はますます近くで聞こえるようになり、
♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
と、小屋をゆすぶるようになりました。
(もう、かんべんできない!)
ついに木こりは腹を立てて、タヌキをやっつける事にしました。
その次の晩、木こりはいろりに火をおこすと、山のように炭をつみあげました。
それから小屋の明かりを消して、戸口のつっかい棒をはずしておきました。
そのうちに炭はがんがんおこって、いろりがまっ赤になりました。
木こりが眠ったふりをしていると、やがておもての方から、
♪カンコン、カンコン
♪ガリガリ、ドッスン
♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
と、いう音が聞こえてきました。
音はだんだん近づいてきて、小屋をゆさぶりはじめました。
それでも木こりはがまんして、眠ったふりをしていました。
♪ゴロンゴロン、ゴロンゴロン
大きな木が、戸にあたるような音がしました。
(今だ!)
木こりは飛び起きると、ガラリと戸を開けました。
そのとたん、戸を叩こうとしたタヌキが勢いあまって小屋の中に転がり、そのままいろりの中へ落ちたのです。
「あちあちあちー!」
タヌキはむちゅうでいろりから飛び出すと、尻尾からけむりを出して逃げていきました。
「ははーん。ざまあみろ!」
こうして次の晩からは音がしなくなり、木こりは安心して眠る事が出来たのです。
おしまい
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