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第 315話
灰にかくした大福餅
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むかしむかし、とても欲張りな和尚さんと小僧がいました。
欲張りな和尚さんは、おいしい物をもらっても小僧には内緒で一人で食べてしまいます。
ある日の事、近所のおばあさんが大福餅を持ってきました。
「あんこがたっぷり入っていて、これはおいしそうだ」
和尚さんは小僧に大福餅をあげたくないので、あみださまの後ろへ大福餅を隠しました。
(さて、どうやって小僧を追い出そうか)
和尚さんはしばらく考えると、小僧に言いました。
「これ、小僧や。村で新しい家を建てているそうじゃ。すまないが、どのくらいの柱がたったか見てきておくれ」
和尚さんの優しい口調に、小僧はピーンときました。
(ははーん。何かたくらんでいるな)
でも小僧は、知らん顔で和尚さんに言いました。
「はい。行ってまいります」
そして小僧はすぐに戻ってきて、戸のすき間から和尚さんをのぞきました。
すると和尚さんは、あみださまの後ろから大福餅を取り出して、いろりのあみの上にならべはじめたのです。
(やっぱり)
やがていろりの上の大福餅が焼けてきて、ぷくーっとふくらみました。
(よし、今だ!)
小僧は、わざとどんどん足音をならしながら言いました。
「和尚さま、ただいま、もどりました!」
「なっ、何! もう帰ってきたのか。しっ、しばらく待て!」
和尚さんは、あわてて大福餅をいろりの中に投げ込むと、上から灰をかぶせました。
「よし、入っていいぞ」
すると小僧は中に入るなり、いろりに手をかざしました。
「ああ寒い、寒い」
いろりの中を見てみると、灰の中のあちこちがふくれています。
(よし、ここだな)
和尚さんはとぼけた口調で、小僧にたずねました。
「ところで、どうじゃった? 柱はどのくらい立っておった」
すると小僧は、そばにあったたきぎの枝を手に持って、
「はい、まずここに一本立っていました」
と、ふくらんでいる灰の上から突きさしました。
「それから、ここにも一本立っていました。そして、ここにも一個、いや、一本」
小僧は大福餅のかくれている灰の上に、次々と枝を突き刺していきます。
(しまった。ばれておったか)
こうなって仕方ありません。
和尚さんは、残念そうに言いました。
「わかった、わかった、わしの負けじゃ。ちょうど焼け頃だし、二人で一緒に食おう」
和尚さんは灰の中から大福餅を取り出すと、小僧と一緒に食べたということです。
おしまい
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