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第 317話
カエルの婿
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むかしむかし、あるところに、子どものいないおじいさんとおばあさんがいました。
二人は毎朝毎晩、畑の行き帰りに観音さまへお願いをします。
「たとえカエルの様な子でも構わないので、どうか子どもを授けて下され」
するとその願いが通じて、おばあさんはカエルの様な顔の子どもを産んだのです。
正直言ってみにくい子どもでしたが、それでもおじいさんとおばあさんは喜んで、その子を大切に育てました。
やがて子どもは年頃になりましたが、カエルみたいな顔なので誰もお嫁に来てくれません。
そんなある日、カエルの様な顔の息子がおじいさんとおばあさんに言いました。
「これから嫁を探しに出かけます。どうか、蕎麦(そば)の粉を一袋下さい」
息子は旅に出かけると、ある長者の家へ泊めてもらいました。
その長者には、二人の美しい娘がいます。
(この娘のどちらかを、おれの嫁にしてやろう)
その日の真夜中、息子は姉娘の寝ている部屋へそっと忍び入ると、蕎麦の粉を姉娘の口のまわりに塗りつけて、袋をその枕元に置いて来たのです。
次の朝、息子は早起きをすると長者に言いました。
「自分の枕元に置いていた蕎麦の粉が無くなっていました。きっと、ここの娘のどちらかが食べたに違いありません」
「何を言うか。わしの娘に限って、そんな事をするはずがない!」
「では、もし食べていたらどうするのですか?」
「もしそうなら、お前の好きな様にしても構わない」
「それでは、おれの嫁にしてもいいのだな」
「ああ、そんな事は万に一つもないが、娘が本当に盗んだのなら家の恥になる。勝手に連れて行くがいい」
「では、確かめに行きましょう」
こうして長者と息子は、姉娘の寝ている部屋に行ってみました。
すると姉娘の枕元には蕎麦の袋があり、口のまわりには蕎麦の粉がいっぱいついています。
姉娘は身に覚えがないと泣きながら訴えますが、息子は聞き入れません。
「約束通り、この娘はおれの嫁だ」
長者も、仕方がないといった顔で言いました。
「ふびんだが、盗みをするような娘はわしの娘ではない。この男と一緒に出て行きなさい」
こうして息子は、姉娘を連れて家に帰りました。
家に帰ると、おじいさんとおばあさんは息子がきれいな嫁を連れて来たので大喜びです。
でも姉娘は悲しくて、毎日毎日ずっと泣いていました。
ある日、息子は火吹き竹を姉娘に渡して言いました。
「これで、おれの身体を思いっきり叩いてくれ。遠慮はいらん、おれを殺すつもりで思いっきり叩け」
姉娘は息子を本当に殺してやりたいと思い、力を込めて何度も何度も息子を叩きました。
すると息子のみにくかったカエルの皮がずるりとむけて、中か空美しい美男子の息子が出てきたのです。
それを見た姉娘は、思わずつぶやきました。
「・・・すてき」
美男子になった息子は、姉娘に言いました。
「おれは観音さまの授け子で、これが本当の姿だ」
こうして美しい息子と美しい娘は、おじいさんやおばあさんと一緒にいつまでも幸せに暮らしたのです。
おしまい
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