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2月9日の日本民話 2
小判を運ぶネズミ
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むかしむかし、今の玄武洞駅(げんぶどうえき)と豊岡駅(とよおかえき)との間に『灘(なだ)』という町がありました。
この町はお金持ちが多かったため、とてもにぎわっていました。
でもある年の大水で町全体が流されてしまい、屋敷も蔵も、みんな川の底に沈んでしまったのです。
さて、それから何年もたったある朝のこと、一人の百姓が豊岡に薪(まき)を売りに行くために舟を出しに灘の岸までやってきました。
そのとき、ガサガサと音がして、二匹のネズミが岸に出てきました。
それがなんと、口に一枚ずつ小判をくわえているのです。
百姓は驚いて、物かげに身をひそめました。
するとネズミは、岸につないである舟のろに飛び乗って舟に入ると、口にくわえた小判をおいて岸へと帰ってゆくのです。
「何とまあ、妙なことをするネズミじゃ」
百姓が首をかしげていると、ネズミがまた出てきて、舟に小判を置いて帰って行くのです。
こんなことが何十回とくり返されたので、舟の中はみるみるうちに小判でいっぱいになりました。
そのうち百姓は、ネズミの仕事を早く終わるようにと、舟をそっと岸に近づけてやりました。
すると小判をくわえてあらわれたネズミは、今度は小判を舟におかずに、そのまま帰ってしまうのです。
「ありゃ?」
と、見ていると、次に出てきたネズミは何もくわえずに舟にのってきて、反対に中の小判をくわえて帰ってゆくではありませんか。
「こりゃ大変じゃ。せっかく積まれたものを」
百姓は立ち上がろうとしたのですが、不思議なことに、体がしびれて動きません。
こんなわけで、とうとう百姓はネズミが小判を持ち去るのをじっと見ているだけでした。
やがて東の空が白みはじめ、ニワトリが鳴くころには、舟の中はすっかり空っぽになっていたそうです。
おしまい
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