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10月21日の世界の昔話

ほら吹き男爵 ミルクの海

ほら吹き男爵 ミルクの海
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 わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
 みんなからは、『ほらふき男爵』とよばれておる。
 今日も、わがはいの冒険話を聞かせてやろう。

 ある時、わがはいは船で航海をしていて、ひどい大嵐に襲われた。
「大変だ! 船底に水が流れ込んできたぞ!」
「風で、船の帆が引き裂かれた!」
 たちまち船内は大混乱となったが、そこは数々の航海で嵐にはなれっこになっているわがはい。
 木の葉のように大波にもまれる船の甲板に、しっかりと両足をふみしめて、
「これくらいの嵐がなんだ! それでも船乗りか! 落ち着いて船底をふさげ! 落ち着いて帆をたたむのだ!」
と、船員たちに的確な指図していたが、そのうちに帆柱が激しい突風にたえかねて、
 ドッシーン!
と、羅針盤の上に倒れてしまった。
「しまった!」
 バラバラに壊れた羅針盤を見て、さすがのわがはいも青くなった。
 羅針盤がなくなったら、方向がわからなくなってしまうのだ。

 まもなく嵐は静まったが、わがはいたちの船は、あてのない航海を続けなければならなかった。
 そして十日間も大海をさまよっているうちに、あたりの海の色が真っ白に変わってきた。
 しかも、何ともいえない甘い香りがただよってくる。
「くんくん。これはもしや」
 わがはいは、おそるおそる指先に白い海水をつけて、ペロリとなめた。
 すると驚いた事に、この白い海水はミルクだったではないか。
 しかも、舌のとろけそうな甘ーいやつだ。
「おーい、ミルクだ。ミルクだぞ」
 わがはいが叫ぶと、みんなは大喜びで船から体をのばして、ひさしぶりに甘いミルクをたっぷりと飲んだ。
 おかげでみんなは、すっかり元気を取り戻した。
「しかし、どうして海の水がミルクに? さては先日の嵐で、メス牛を積んだ船でも転覆したのかな?」
「いや、それならメス牛も流れているはず。転覆したのは、ミルクを積んだ船だろう」
「何を言っている。ミルクを積んだ船が一せきや二せき転覆したところで、海の水がミルクになるはずがない」
「じゃあ、何十せきものミルク船が転覆したんだろう」
 そんなくだらない議論をしているうちに、わがはいたちはやっと島の影を見つけてその島に上陸した。

 今日の教訓は、『大切な物は、真っ先に安全なところへ』だ。
 海の航海で何よりも大切なのは、方向を示す羅針盤だ。
 この羅針盤のおかげで、船乗りたちは長い航海が出来るようになったのだが、羅針盤がなければ今回の様に大海をさまよう事となる。
 きみたちも突然の地震や火事に備えて、大切な物を持ち出せるようにしておこう。

 さて、この冒険はまだまだ続くが、続きは次の機会に話してやろうな。

おしまい

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