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第94話

人間に飼われるようになったけもの

人間に飼われる様になったけもの
フィンランドの昔話 → フィンランドの国情報

おりがみをつくろう ( おりがみくらぶ より)
熊の折り紙くま 狐の折り紙きつね 馬の折り紙うま 羊の折り紙ひつじ トナカイの折り紙となかい

 むかしむかし、ある牧師(ぼくし)さんが、お嫁さんをもらう事になりました。
 そこでその辺りに住む動物たちを、結婚式に招きました。
 招かれた動物は、クマと、オオカミと、ヒョウと、キツネと、シロギツネと、ウマと、ウシと、ヤギと、ヒツジと、トナカイです。
 一番始めにクマが出かけて行き、途中で男の子に出会いました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
と、クマが答えました。
 すると男の子は、心配そうに言いました。
「行かない方がいいよ。クマさんの毛皮は温かくて素晴らしいだろう。みんな毛皮が欲しくなって、クマさんを撃ち殺して皮をはいでしまうよ」
 クマは男の子の言う事を聞いて、森へ帰って行きました。

 今度は、オオカミがやって来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
と、オオカミが答えました。
「行かない方がいいよ。オオカミさんの毛皮はとても役に立ちそうだからね。もう二度と、森へ帰れなくなるかもしれないよ。それでもいいのかい?」
 オオカミはクマと同じ様に、結婚式に行くのを止めて帰りました。

 すると今度は、ヒョウが来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねると、
「牧師さんの結婚式に」
と、ヒョウが答えました。
「行かない方がいいよ。ヒョウさんの毛皮は、人間たちがみんな欲しがっているからね。行くと捕まえられて、敷物にされてしまうよ」
 ヒョウは男の子の言う通りだと思って、森ヘ帰る事にしました。

 その次に、キツネが来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
と、キツネが答えました。
「行かない方がいいよ。キツネさんの毛皮はとても人気があるからね。行くと捕まえられて、えり巻きにされてしまうよ」
 キツネは男の子の言う通りだと思って、くるりと向きを変えると森の中へ逃げて行きました。

 すると今度は、シロギツネが来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
「行かない方がいいよ。狩りに失敗したイヌが、シロギツネさんが来るのを待っているからね。行った途端に食べられてしまうよ」
 シロギツネはビックリして、帰って行きました。

 すると今度は、ウマがやって来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
「行かない方がいいよ。ウマさんは力持ちだからね。捕まって働かされちゃうよ。もう遊べなくなっちゃうよ」
と、男の子は言いましたが、ウマは、
「大丈夫さ。もし捕まっても、自慢の足で逃げて来るから」
と、言って、牧師さんの結婚式の場所ヘ急ぎました。
 そしてそこへ着くとウマは人間たちに捕まり、逃げられない様にロープに付けられて働かされる事になりました。

 次に、メスウシがやって来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
「行かない方がいいよ。ウシさんはミルクをたくさん出してくれるし、ウシさんの皮は役に立つし、そのうえ肉はおいしいから、人間たちはほうってはおかないと思うよ」
「大丈夫よ。もし捕まっても、自慢の力でロープを付けられても引きちぎって来るから」
 そして男の子の言う事を聞かずにメスウシは旅を続けて、人間たちに捕まってしまいました。
 メスウシはロープを引きちぎる力を持っていましたが、人間はロープを鼻の鼻輪に付けたので、メスウシは鼻輪が痛くてロープを引きちぎる事は出来ませんでした。

 次に、ヤギがやって来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
「行かない方がいいよ。ヤギさんもミルクをたくさん出してくれるから、人間たちはほうってはおかないと思うよ」
「大丈夫よ。もし捕まっても、忍び足で逃げて来るから」
 ヤギも男の子の言う事を聞かずに、人間たちに捕まってしまいました。
 捕まったヤギは忍び足で逃げようとしましたが、首に付けられた鈴が『♪カランコローン』と音を出すので、逃げる事は出来ませんでした。

 次に、ヒツジがやって来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
「行かない方がいいよ。ヒツジさんは温かい服を作る毛をたくさん持っているし、そのうえ肉はおいしいから、人間たちはほうってはおかないと思うよ」
「大丈夫よ。もし捕まっても、モコモコの毛でどこにいるかわからなくなるから、隙を見て逃げて来るわ」
 ヒツジも、男の子の言う事を聞こうとはしませんでした。
 人間たちはヒツジを捕まえると鼻の良いイヌにヒツジの番をさせたので、ヒツジは逃げる事が出来なくなりました。

 さて最後に、トナカイがやって来ました。
「どこへ行くの?」
と、男の子が尋ねました。
「牧師さんの結婚式に」
「トナカイさんは、どの動物よりも早く走れるんだから、みんながきみを帰してはくれないよ」
「わたしなら心配いりません。わたしは力が強くて足が速いから、さっと逃げて来ますよ」
 トナカイはそう言って、結婚式の場所へ急ぎました。
 するとトナカイは男の子の言った通り捕まってしまいました。
 トナカイは強い力と速い足を持っていましたが、人間に重いソリにつながれたので、逃げ出す事が出来なくなりました。

 さて、男の子の注意を聞いた動物たち、
「クマと、オオカミと、ヒョウと、キツネと、シロギツネ」は、
 今でも自由に森の中をはねまわっています。

 ところが、
「ウマや、ウシや、ヤギや、ヒツジや、トナカイ」のように、
 男の子の言う事を聞かなかった動物たちは、それからというもの、ずっと人間に飼われる様になったのです。

おしまい

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