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10月22日のイソップ童話
恋するライオンとお百姓
あるライオンが、お百姓の娘を好きになりました。
「おたくの娘さんを、どうぞぼくのお嫁さんに下さい」
とライオンは、お百姓にたのみました。
お百姓は、すっかりこまってしまいました。
かわいい娘を、おそろしいライオンのお嫁さんにするなんてとんでもない話しです。
でも、あいてはライオンですから、ことわることもこわくてできません。
さんざん考えたあげく、お百姓は1つの計画を思いつきました。
毎日毎日「娘さんを下さい」といってくるライオンに、
「そりゃあ、あなたなら娘のむことしてもうしぶんありません。よろこんでお嫁にやりたいのですが。ただ、1つ心配なことがあるのです。あなたのその大きなキバをぬいていただけませんか。それから、爪をみじかく切っていただけないでしょうか。じつは、娘があなたのキバと爪がこわくてたまらない、というものですから」
ライオンは娘にむちゅうでしたから、すぐに、いわれたとおりにしました。
こうなると、お百姓にとって、もうライオンはこわい動物ではありません。
次の日、ライオンがたずねてきたときには、棒でなぐって追い返してしまいました。
人のいうことをかるがるしく信用して、自分の武器を捨ててしまうと、それまで自分をこわがっていたあいてにも、やすやすとまかさせてしまうということを、この話はおしえています。
おしまい