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日本のふしぎ話 第2話

乙姫様のくれたネコ

乙姫様のくれたネコ

 むかしむかし、三人の娘をもったお百姓(ひゃくしょう→詳細)さんがいました。
 三人とも、とっくにとついでいたのですが、どういうわけか、いちばん上の娘だけはひどい貧乏暮らしで、その日の食べ物もあるかないかのありさまです。
 お百姓さんは、毎年くれになると、三人の娘のむこをよぶことにしていました。
 妹二人のむこは、金があるので、みやげに酒やら炭俵(すみだわら)をドッサリと持ってきます。
 お百姓さんもおかみさんも喜んで、
「よう来た、よう来た」
と、言いながら、ごちそうを出してもてなしました。
 ところが、姉むこは金がないので、いつも山からとってきたしばの束をかついでいき、
「たきつけにでもしてください」
と、言いました。
(ふん、こんなものしか持ってこれないのか)
 お百姓さんもおかみさんも、心の中でばかにして、ただの一度もごちそうを出したことがありません。
 また年のくれになり、三人のむこたちが、お百姓さんの家へよばれることになりました。
 あいかわらず、しばの束しか持っていけない姉むこは、家を出たものの、どうしてもお百姓さんのところへ行く気がしません。
(持っていっても、喜ばれないのなら、乙姫(おとひめ)さまにあげたほうがましだ)
 姉むこは、海辺に行くと、
「竜宮(りゅうぐう→詳細)の乙姫(おとひめ→詳細)さま、おらのお歳暮(おせいぼ→年の終わりにおくる、おくり物)にもらってください」
と、言って、海の中にしばの束を投げこみました。
 そのまま家にもどろうとしたら、ふいに海の中から美しい女が出てきて、
「ただいまは結構(けっこう)なもの、ありがとうございました。乙姫さまがお礼をしたいそうですから、わたしといっしょに来てください」
と、言います。
 姉むこはビックリするやら、あわてるやら。
「と、とんでもない。おらあ、お礼なんかいらねえ。それに泳ぐこともできんし」
「大丈夫ですよ。わたしがおんぶしていきますから目をつむっていてください。さあ、せなかに。えんりょしないで」
 女がしんせつにすすめるので、姉むこはしかたなく女におぶさり、目をつむりました。
 そのとたん気がとおくなり、なにがなんだかわからなくなりました。
「さあ、お疲れさま。つきましたよ」
 言われて、ハッと目を開けると、なんとりっぱな座敷(ざしき)にすわっているではありませんか。
 目の前には山のようなごちそうがあり、美しい音楽まで聞こえてきます。
「ささっ、どんどん召しあがれ」
 女のついでくれるお酒を飲んだ姉むこは、思わずうなりました。
 こんなうまい酒は、今まで飲んだことがありません。
 それに、ごちそうもまたとろけるようなうまさで、まるで夢を見ている気分です。
 姉むこが、ウットリしていると、女が小声で言いました。
「乙姫さまがなにかあげようと言われたら、『なにもいりませんが、ネコを一匹ください』と、言いなさい」
(ネコなんかもらっても、びんぼうだから、食べさせられるかな?)
 姉むこが考えていたら、乙姫さまが、天女(てんにょ)のような衣を着た女たちをひきつれて座敷にやってきました。
「おくりものをありがとう。お礼をさしあげます。なんでもほしいものを言いなさい。もしのぞみの物がなければ、玉手箱(たまてばこ)などは、・・・」
 乙姫さまの美しさにのぼせてしまった姉むこは、考えるひまもなく、
「ネコを一匹ください!」
と、言いました。
「なに、ネコをくれですって? ネコは竜宮に一匹しかいない宝物。・・・でも、あなたの望みとあらばしかたありません。いいですか。竜宮のネコは一日にアズキ一合を食べさせると、一升(一合の十倍で約一・八リットル)の小判を生みます。どうぞいつまでもかわいがってくださいね」
 乙姫さまはそう言って、かわいいネコを一匹くれました。
 姉むこはネコを抱いて、さっきの女の背中につかまりました。
 目をつむると、フッと気が遠くなり、目が覚めた時には、もとの海辺に立っていて、一匹のネコを抱いていました。
 姉むこは大喜びで家にもどると、嫁さんにわけを話し、とっておきのアズキを一合食べさせました。
 すると、ネコのおしりから、小判がドンドンとびだしてきて、見る見るうちに、一升分ほどになりました。
 姉むこはその小判で、大きな魚やら高価な着物を買いこみ、それを持ってお百姓さんの家へと行きました。
「どうして、こんな高価なものを?」
 お百姓さんもおかみさんも、とびあがるほどおどろき、姉むこに初めて酒やごちそうをふるまいました。
「それにしても、しばの束しか持ってこられないおまえが、なんだって金持ちになった?」
 二人が聞くので、姉むこは、乙姫さまからネコをもらったことを正直に話しました。
「なに、竜宮のネコだって!」
 欲の深いおかみさんは、急にそのネコがほしくなりました。
「すまんが、わしにそのネコを貸してくれ」
と、言って、姉むこといっしょに家までついてきます。
 姉むこも嫁さんもしかたなく、
「そんなら、ほんの二、三日だけだよ。一日に一合のアズキを食わせるようにしてください」
と、言って、ネコを渡しました。
(しめしめ、このネコさえいれば、大金持ちになれるぞ)
 おかみさんは家にもどると、さっそくアズキを一合食わせようとしましたが、
(まてよ、一合で一升の小判を生むなら、五合食わせれば五升の小判を生むわけだ)
 そこで、いやがるネコにむりやり五合のアズキを食べさせたら、ネコはくさいフンを山のように出して、そのまま死んでしまいました。
「なんだ、なんだ。小判を生むなんて、とんでもない。山のようなフンなんかしやがって!」
 お百姓さんもおかみさんも、カンカンに怒って、姉むこの家へどなりこんできました。
「よくも、わしらをだましたな」
「だますなんて、とんでもない」
 姉むこは、すぐにお百姓さんの家へ行って、死んだネコをもらい受けてきました。
「かわいそうに。どうか、かんべんしておくれ」
 姉むこは、ネコを庭にうめ、毎日手を合わせました。
 すると二、三日して、ネコをうめたところから南天(なんてん→メギ科の常緑低木)の木が生えてきて、見る見る大きくなり、たくさんの実をつけました。
 姉むこはそれを見ると、かわいかったネコの目を思い出し、思わず木をゆさぶってみました。
と、南天がバラバラこぼれて、黄金に変わったのです。
 黄金のおかげで、姉むこは大へんな金持ちになり、娘は三人の姉妹の中でいちばんしあわせな一生を送ったということです。

おしまい

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