みんなが知ってる 日本の有名な話 ☆福娘童話集☆ 童話・昔話・おとぎ話の福娘童話集
福娘童話集 > ジャンル別 > 日本の有名な話 > 地獄のあばれもの
お話しの移動
・ 福娘童話集

・ ジャンル別

・ 日本の有名な話 (全50話)

→  1話 〜 10話
→ 11話 〜 20話
→ 21話 〜 30話
→ 31話 〜 40話
→ 41話 〜 50話
 


日本の有名な話 第49話

地獄のあばれもの

地獄のあばれもの

 むかしむかし、ある町に一人の医者がおりましたが、人の病をなおすどころか、自分が病にかかって死んでしまいました。
 死んだ人は三途(さんず)の川をわたり、あの世へいくのですが、よい行いをした人は極楽(ごくらく→天国)に、悪い行いをした人は地獄(じごく)に行くのです。
 そして極楽行きか地獄行きかは、えんま大王が決めるのでした。
 医者は、えんま大王にいいました。
「大王さま、わたくしめは医者でございます。生前(せいぜん→生きているとき)は、人々のお役にたったのでございます。どうぞ、極楽へやってくださいませ」
「こら! うそつきめ。お前はにせ医者で、あくどくもうけおったではないか」
「そんな、めっそうもない」
「だまれ! わしに口答えする気か。おまえは地獄行きじゃ!」
 医者は鬼につまみあげられ、ポイッとほうりなげられてしまいました。
「ヒャァーーッ!」
 落ちたところは、地獄へとつづく道でした。
 医者は覚悟を決めると、かたわらの石に腰をおろしました。
「どうせ地獄行きじゃあ。だれか、道づれが来るのを待とう」
 さて、次にえんま大王のところへきたのは、山ぶしでした。
 山ぶしは、えんま大王の前に進み出て。
「せっしゃは、人助けの山ぶしというて、世間のわざわいをとりのぞきもうした。まちがいなく、極楽行きでしょうな」
「うそをつくでない! おまえは神仏のたたりじゃというて、なんでもない人々から、金をまきあげたじゃろ!」
「と、とんでもない」
「お前は、地獄行きじゃあ!」
 山ぶしも、ポイッとほうりなげられました。
 地獄への道では、医者が待っていました。
「やあ、あんさんも地獄行きで? これで二人になったが、もう一人いれば心強いなあ」
 すると山ぶしも、腰をおろして、
「どうせ地獄行きじゃ。あわてる事はない。もう一人来るまで待とう」
 さて、次にあらわれたのは、かじ屋のおやじです。
「大王さま、おらは百姓(ひゃくしょう)のカマやクワをたくさん作って人助けしました。極楽行きでしょう」
「お前は鉄にまぜものをして、なまくら道具を売ったな! ほら、ちゃんとえんま帳(えんまちょう→生前の罪を書きとめるとされる帳面)に書いてあるわい」
「まぜものをしないと、安くはなりません。安くねえと、貧乏人には買えません」
「口答えするでない。地獄へ行け!」
 かじ屋もポイッとほうりなげられ、地獄への道までふっとんでくると、医者と山ぶしが、ニコニコ顔でむかえました。
「これで三人」
「では、ぼちぼちまいりましょうか」
 そんなわけで、三人はつれだって地獄の入り口、地獄門につきました。
 門番の鬼が、おそろしい顔で言いました。
「ほれ! さっさと入らんか。そして、あの山を登っていくんだ」
 三人が見ると、なんとそれは、するどい刃物がズラリとならんだ、つるぎの山でした。
「あんな山を登ったら、足がさけちまうよ」
「ど、どうしよう」
 医者と山ぶしがおろおろしていると、かじ屋がニッコリ。
「ここは、おいらにまかしとけ」
 なにをするのかと思えば、とりだしたヤットコ(→大きなペンチの様な道具)で、ポキポキとつるぎをへし折り、火をおこして、トンカン、トンカンと、それをうちなおしました。
「そら出来た。鉄のわらじだ。これをはいて歩けば大丈夫」
 三人は鉄のわらじをはいて、つるぎの山へのぼっていきました。
 するとポッキン、ポッキン、つるぎはおもしろいように折れてしまいます。
「うひゃー、こりゃあすごい! 後ろから来る者のために、道をつくっておこう」
 ポッキン、ポッキン、
 ポキポキ、ポッキン。
「それそれ、どんどん、折れ折れ」
 たまげたのは、鬼たちです。
「なんだ、あいつら!」
「た、たいへんだ! 大王さまに知らせねば」
 それを聞いたえんま大王は、おこったのなんの。
「つるぎの山に道を作っただと? ばっかも〜ん! だまって見とるやつがあるか! さっさとひっとらえて、カマへほうりこめ。カマゆでじゃ〜!」
 たちまち三人はつかまって、大きなカマの中にほうりこまれました。
 鬼たちは、下からドンドンと火をたきます。
「あちっちっち、こりゃいかん!」
「もうだめじゃ!」
 すると今度は、山ぶしが、
「ここは、わたしにまかせなされ。じまんの法力(ほうりき)を見せてくれる」
と、呪文(じゅもん)をとなえました。
「ぬるま湯になれ、ぬるま湯になれ。ナムウンケイアラビソワカ、か〜っ!」
 すると不思議な事に、お湯は、ちょうどいい湯かげんになりました。
「おぬしの術は、たいしたもんじゃ」
「こんなりっぱな山ぶしどんを地獄に送るなんて、えんまも目がないのう」
「それにしても、いい湯じゃ」
「お〜い、そこのオニたち。手ぬぐいをかしてくれんか。からだを洗いたいんじゃ」
 三人はすっかりいい気分で、うかれて歌まで歌いだすしまつ。
 さて、いかりくるったえんま大王は。
「うぬぬぬ、あやつら、地獄をバカにしおって! ゆるせん! ゆるせん! わしが、じきじきにせいばいしてくれるわ!」
 えんま大王は大きな手で三人をひとつかみにすると、ポイッと、口の中へほうりこんでしまいました。
 ヒューーーッ、ストーン!
 三人は、えんま大王のはらの中に落ちていきました。
「うむ、さすがはえんま大王のはらの中、なかなか広いわい」
 でも、おもしろがっている場合ではありません。
「あっ、なんだか体がムズムズしてきた」
「大変じゃ、体かとけてきた!」
「今度こそ、もうだめじゃ!」
 山ぶしとかじ屋は泣き出しましたが、医者はおちついたもので、
「心配するな。いま、体のとけぬ薬を作ったで、飲んでみなされ」
 その薬を飲むと、たちまち体はシャンとなりました。
 三人は大喜びで、えんま大王のはらの中を探検(たんけん)です。
「医者どん、これは何だ?」
「そりゃ、笑いのひもじゃよ」
 医者がその笑いのひもをひっぱると、えんま大王は、急に笑いだしました。
「ウヒ、ウヒ、ウヒャハハハハハー」
 今度は、泣きのひもをひっぱると、
「うぇーん、うぇーん。悲しいよう」
と、なみだがポロポロ。
 わけもなく、笑ったり泣いたりするえんま大王に、鬼たちはきみわるそうに顔を見合わせました。
「こりゃあ、おもしろい」
 はらの中の三人は、笑いのひもに、泣きのひも、それから怒りのひもに、くしゃみのひもと、あちらこちらのひもをメチャクチャにひっぱりました。
「ギャハハハハハッ、はひ? ガオーッ、ガオーッ、うぇ〜ん、へっくしょーん!」
 いやはや、もう大変なさわぎです。
 山ぶしとかじ屋が大笑いしていると、医者がはらの中に、なにか薬をぬりながらいいました。
「さて、そろそろ下し薬をぬって、外へ出よう。うっひひひ。・・・これはきくぞ」
 泣いたり笑ったりしていたえんま大王は、急にはらをかかえて便所にかけこみました。
 ピー、ゴロゴロ。
 えんま大王のおしりから、医者、山ぶし、かじ屋が、次々と飛び出してきました。
 ニコニコ顔の三人を見た大王は、
「よくも、わしに恥をかかせたな。お前たちは、地獄におるしかくもないわい! とっととしゃばへもどれっ!」
と、三人を地上へふきとばしてしまいました。
 こうして、この世にまいもどった三人は、顔を見合わせて大笑い。
 それから三人は、いつまでも仲良くくらしたという事です。

おしまい

 前のページへ戻る

ジャンルの選択
・有名な話 日本 世界
・こわい話 日本 世界
・わらい話 日本 世界
・感動話 日本 世界
・とんち話 日本 世界
・悲しい話 日本 世界
・ふしぎ話 日本 世界
・恩返し話 日本 世界
・恋物語 日本 世界
福娘童話集
人気コーナー
きょうの新作昔話
未公開の童話・昔話を毎日
一話ずつ公開
おはなし きかせてね
福娘童話集をプロの声優・ナレーターが朗読
小学生童話
幼稚園から小学6年生まで、学年別の童話・昔話集
おくすり童話
読むお薬で、病気を吹き飛ばそう!

福娘の姉妹サイト

http://hukumusume.com

366日への旅
毎日の記念日・誕生花 ・有名人の誕生日と性格判断
世界60秒巡り
国旗国歌や世界遺産など、世界の国々の豆知識
子どもの病気相談所
病気検索と対応方法、症状から検索するWEB問診