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2月27日の日本民話

カッパと伝次の約束

カッパと伝次の約束
熊本県の民話

 むかしむかし、ある村に、一匹のカッパがすんでいました。
 このカッパは力が強くて、大変なすもう好きです。
 おまけにイタズラも大好きだったので、村の人たちは手をやいていました。
 ある時、お百姓(ひゃくしょう)の伝次(でんじ)が仕事をおえて、川辺でよごれたウマを洗っていました。
 すると川の中からカッパがでてきて、ウマのしりこ玉をとろうとしたのです。
 村一番の力持ちである伝次は、
「何を悪さするか。ひねりつぶしてやるぞ!」
と、いうと、カッパは逃げようともせずに、
「ふん! 伝次よ、お前は村一番の力持ちというが、おいらには勝てねえ。いっちょう勝負だ」
と、身がまえました。
「なにを、なまいきな。かかってこい!」
 こうして、伝次とカッパのとっくみあいが始まりました。
 するとそのとき、カッパの頭のお皿に入っている水がこぼれおちたのです。
 水は、カッパの力のみなもとです。
 こうなっては、カッパは力がでません。
 たちまちねじふせられて、ウマ小屋の柱にしばりつけられてしまいました。
「日干しにしてやる。そこにずっとおれ」
 伝次はいいすてると、家の中へ入ってしまいました。
 しばらくすると伝次のおかみさんがウマに水をやるため、おけに水をいれて持ってきました。
 するとカッパは、おかみさんをからかったのです。
「このブサイク女。鼻ペチャ女」
 おかみさんは怒って、おけの水をカッパの頭の上からザブッとかぶせました。
「ウッヒヒヒ。ありがとよ」
 頭のお皿に水がたまって元気をとりもどしたカッパは、なわを引きちぎって川へ逃げていきました。
 それからしばらくたった、ある夜のことです。
 伝次が畑の中の道を歩いてとなり村から帰ってくると、あのカッパが畑でイモほりをしているのが月明かりに見えました。
「こらっ! イモをぬすむとはなにごとか! お前はまだ悪さをしておるのか!」
 伝次が大声でどなると、カッパは、
「すもうをとるべえ」
と、いって、かかってきました。
 伝次はまた、カッパとすもうをとることになりましたが、今度も勝負はあっけなくついてしまいました。
 カッパが伝次のおなかの下へ頭をおしつけてきたとき、うっかり頭のお皿の水をこぼしてしまったのです。
「どうだ。もうぜったいに悪さはしないと約束するか。しなければ、今度は本当に日干しにしてくれるぞ」
「約束する」
「それは本当か? お前は、平気でうそをつくからな」
「カッパは、うそはつかぬ」
「よし、なら証文(しょうもん)を書け」
と、伝次はカッパに証文を書かせました。
 紙ではやぶれてしまうので、二つの石に証文をきざませて、おたがいに一個ずつ持つことにしました。
 その石には、
《この石がくさるまで、人間に悪さはしません》
と、きざまれていました。
 その後、カッパは約束を守って、村の人たちにイタズラはしなくなりました。
 けれども、ウマにはときどきイタズラをするので、村の人たちはこまっていたという事です。

おしまい

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