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4月17日の日本民話

ふるさとへ飛んだ侍

ふるさとへ飛んだ侍
香川県の民話

 むかしむかし、高松(たかまつ→香川県)生まれの若い(さむらい)が江戸つとめになって、目黒(めぐろ→東京都)にある侍屋敷で働いていました。
 ある日の事、若い侍は、近くにある不動尊(ふどうそん)へお参りにでかけました。
 江戸の暮らしに疲れて、ふるさとの事ばかり思いだしながら歩いていると、一人のお坊さんが声をかけてきたのです。
「あんたは、よっぽどふるさとへ帰りたいようじゃな。ふるさとはどこじゃ? 帰りたいならつれていってやろう。ついてきなされ」
 若い侍は喜んで、お坊さんのあとについていきました。
 お坊さんは木のかげに若い侍をつれていくと、片手をにぎって目を閉じるようにいいました。
 すると、若い侍の体がフワリと浮きあがったのです。
 まるで風をきって、空を飛んでいるような気分です。
「さあ、ついたぞ。目をあけてもいいぞ」
 そういわれて目をひらくと、お坊さんの姿はどこにもありません。
 いつのまにか、あたりは夜になっていましたが、そこはたしかに高松の自分の家の前でした。
「なんとも、不思議な事もあるものだ」
 そう思いながら、月の光にてらしだされているあたりを見まわしていると、家の中から父親が出てきました。
 父親は、若い侍に気づいてビックリです。
 江戸へいったはずのわが子が、家の前に立っているのですから。
 父親は幽霊(ゆうれい)かと思い、急いで家に逃げ込もうとしましたが、またすぐにふりむいて、ジッと若い侍をみつめました。
「やっぱりお前か。いつ江戸からもどってきたんじゃ? そんなところに立っておらずに、早く家の中に入れ」
 若い侍は、父親にうながされて家に入りました。
 そして喜ぶ家の者たちに、この不思議な出来事を話しました。
 若い侍はずっと目をつぶっていたので、どこを飛んできたのかまったくわからないと首をかしげるばかりでしたが、父親はあまりのおどろきで、三日ばかり高い熱をだして寝こんでしまったという事です。

おしまい

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