| 日本の有名な話 第28話
 
 
  イラスト 知瑛美  サイト 昔話で販促!
 
 お月さまに行ったウサギ
 青森県の民話 → 青森県情報
  むかしむかし、サルとキツネとウサギが、神さまのところへ行きました。 
  「神さま、どうかお願いです。こんど生まれてくる時は、人間にしてください」すると、神さまが言いました。
 「人間に生まれたいのなら、自分の食べ物を人間にごちそうすることだ」
 
  そこでサルは山へ行き、クリやカキの実を取ってきました。 
  キツネは川へ行って、魚を捕まえてきました。ところがウサギの食べ物は、やわらかい草です。
 今は冬なので、やわらかい草は一本もありません。
 (こまったなあ。どうしよう?)
 
   ウサギはガッカリして、サルとキツネのいるところへ戻ってきました。「ウサギさん、きみのごちそうはどうしたの?」
 
  「だめだよ。草はかれているし、木のめは、まだ出ていないんだ」すると、サルが言いました。
 「それじゃウサギさんは、いつまでもウサギのままでいるんだな」
 「そうだよ。ごちそうも持ってこないで人間に生まれかわりたいなんて、ウサギさんはずるいよ」
 キツネも、怒って言いました。
 「ごめん。でも、もう一日だけ待って」
 
 次の日、ウサギは山へ行くと、かれ木をひろい集めてきました。
 
  そしてサルとキツネの前に、かれ木をつみあげて言いました。「今からごちそうを焼くから、火をつけておくれ」
 サルとキツネが火をつけると、かれ木はパッと燃え上がりました。
 
  「ぼくのごちそうはないんだ。だから、・・・だから、ぼくを人間に食べさせておくれ」と、言うなり、ウサギは火の中に飛び込んだのです。
 その時、空の上から神さまがおりてきて、さっとウサギを抱きかかえると、また空へのぼっていきました。
 
   サルもキツネも、ビックリ。すると、神さまが言いました。
 「サルもキツネも、きっと人間に生まれかわれるだろう。
 なにしろ自分の大切な食べ物を、人間にごちそうしようとしたからね。
 それは、とても素晴らしい事だよ。
 でもウサギは、もっと素晴らしい。
 自分をすててまで、人間に食べさせようとしたのだからね。
 ウサギをお月さまの国で、いつまでも幸せにしてあげよう」
 
   神さまにだきかかえられて、ウサギは空高くのぼっていきました。
 その時からウサギは、お月さまの中で楽しく暮らしているという事です。
 おしまい ※ インドにも、同じようなお話しがあります。 → 月の中のウサギ   
 
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