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8月15日の日本民話
キュウリを食べない村
徳島県の民話
むかしむかし、阿波の国(あわのくに→徳島県)の山里にすむ男が川で魚釣りをしていると、川上から一本のキュウリが流れてきました。
ヘチマのように大きなキュウリで、キュウリの上に、なにかがチョコンとのっています。
「はて、あれはなんだろう?」
男は釣りざおを使って、流れてくるキュウリをひきよせました。
大きなキュウリの上にのっていたのは、十センチほどの、木彫りの小さな神さまの像でした。
男はビックリして、釣りざおをそこに置いたまま、ご神体(しんたい)とキュウリを持って、村の人たちのところへ走っていきました。
ご神体はあまりにも神々しく見えるので、思わず手をあわせておがむ人たちもいたほどです。
男はそのご神体をたいせつに家に置いて、家の守り神としてあがめるといいましたが、村の人たちが、
「わしらの家のような、そまつなところに置くのは失礼じゃ。ばちがあたるかもしれんぞ。山の奥から流れてきた、ありがたいご神体だから、これはちゃんと社(やしろ)をたてて、おまつりしなければなるまい」
と、いうので、みんなで小さな社をたてて、ご神体をまつることにしたのです。
そのとき、ご神体がのってきた大きなキュウリを、二つに切ってみました。
中はふつうのキュウリと同じで、べつにかわったものはでてきませんでしたが、切り口の模様(もよう)があまりにも立派(りっぱ)だったので、その模様をご神体のしるしにすることにしました。
「キュウリは、このご神体がのってこられたものだ。いってみれば、この神さまのおみ足のようなものじゃ。それを食べることはおそれおおいことじゃ」
と、この村ではキュウリをいっさい口にしないことにしたという事です。
おしまい