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8月24日の日本民話
カエルのお坊さん
岡山県の民話
むかしむかし、ある池の中に、カエルのお坊さんがいました。
毎日、ハスの葉っぱの上に座って、
「ナムゲロゲロダブツ」
と、お経をあげていました。
とてもすごいお坊さんで、その日に咲(さ)くハスの花の数をかぞえて、いくつお葬式(そうしき)があるかを言い当てるのです。
さて、ある日の朝の事、池の上にハスの花が五つ咲きました。
(おや、今日は五つもお葬式があって、忙しくなりそうだ)
と、思っていたら、さっそくモグラのおかみさんがやってきて、
「カエルのお坊さま。主人が亡くなりました」
と、言いました。
「それはお気の毒に。でも、あんたのご主人はよく働いたから、立派な仏さまになれるだろう。ナムゲロゲロダブツ」
と、ていねいにお経をあげてやりました。
するとそこへ、セミの息子がやってきて、
「カエルのお坊さま。おやじが亡くなりました。立派な仏さまになれるよう、お経をあげてやってください」
と、言いました。
「残念じゃが、そいつは無理じゃな。夏の間、仕事もせずに歌ばかりうたっていて、立派な仏さまになれるもんか。まあそれでも、お経だけはあげてやろう」
カエルのお坊さんはこわい顔で、
「ナムゲロゲロダブツ!」
と、お経をあげました。
セミの息子がガッカリして帰って行くと、今度はコオロギの家から使いがやってきました。
「カエルのお坊さま。うちのだんなが、亡くなりました」
「なんと、コオロギのだんなが亡くなったとな。うーん、これからはいよいよ、お前さんたちの季節がくるというのに、なんともおしいのう。よしよし、立派な仏さまになれるよう、お経をあげてやろう。ナムゲロゲロダブツ」
カエルのお坊さんがいっしょうけんめいお経をあげていると、目の前に緋鯉(ひごい→金・銀・赤などの色の付いたコイの総称)が顔を出して言いました。
「カエルのお坊さま。さっき、夫が亡くなりました。どうか立派な仏さまになれるように、お経をあげてやってください」
「だめだ、だめだ。夫婦して毎日遊びくらしていたくせに。・・・でもまあ、お経ぐらいはあげてやるが。ナムゲロゲロダブツ!」
お経がすむと、カエルのお坊さんがホッとして言いました。
「やれやれ、これで四つのお葬式が終わったぞ。あと一つはどうなっている? 早く言ってこないかな」
そのとたん、池のそばで遊んでいた人間の子どもが石を投げました。
石はカエルのお坊さんの頭に当たり、カエルのお坊さんはひっくり返ると、白いおなかを出して言いました。
「こいつはたまげた。五つ目のお葬式がわしとは、気がつかなかった。ナムゲロゲロダブツ」
そしてそのまま、死んでしまったという事です。
おしまい