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9月10日の日本民話

若い男に化けた鬼

若い男に化けた鬼
富山県の民話

 むかしむかし、越中の国(えっちゅうのくに→富山県)に、一軒の鍛治屋(かじや)がありました。
 鍛冶屋といっても大勢の職人を使う金持ちで、長者(ちょうじゃ)のような屋敷に住んでいます。
 この鍛冶屋に一人娘がいて、そろそろむこをもらう年頃になりました。
 そこで鍛冶屋は、職人たちに、
「一夜のうちに千本の槍(やり)をつくれる者をむこにする」
と、いったのです。
 しかしいくら腕のいい職人でも、一夜に千本の槍をつくることはできません。
 鍛冶屋はしかたなく、その事を立て札にして、すごい腕の職人が現れるのを待ちました。
 さて、この立て札を見て喜んだのは、近くの山に住むです。
(グワハハハハ。千本の槍なんて、わけもない)
と、さっそく若い人間の男に化けて、屋敷にやってきました。
「本当に、千本の槍ができるのか?」
「できます。一番どりが鳴くまでには、かならずつくってみせます」
 鬼が化けた若い男は、きっぱりといいました。
「よし、それならつくってみろ」
 日がくれると同時に、若い男は仕事場に入り、槍づくりを始めました。
 だけど仕事場からは、ときおり風の吹くような音が聞こえるだけで、鉄を打つ音が聞こえてきません。
「はて。いったいなにをしているのだ?」
 不思議に思った鍛冶屋が、こっそり仕事場をのぞいてみると、なんと若い男は口から炎をはいて、まっ赤になった鉄をまるでアメのように曲げているではありませんか。
 槍はたちまちのうちにできあがり、どんどん積みあげられていきました。
 この調子では、夜明けを待たなくても千本になってしまいます。
 鍛冶屋は恐ろしくなって、なんとか仕事をやめさせる手はないものかと考えました。
(こうなったら、槍が千本できあがる前に、一番どりを鳴かせることだ)
 鍛冶屋は熱湯をつぼに入れて、ニワトリ小屋にしのびこみました。
 どのニワトリも、まだ眠ったままです。
(どうか、一匹でも鳴いてくれますように)
 鍛冶屋はいのる気持ちで、ニワトリのとまり木に熱湯を流しました。
 そのとたん、ニワトリたちは驚いて、とまり木を飛びおりた一羽のオンドリが、
「コケコッコー!」
と、鳴いたのです。
 それを聞いて、若い男に化けていた鬼はビックリです。
(さては、正体がばれたか。あと一本だったのに)
 若い男はたちまち鬼の姿にもどると、そのまま外へと逃げ出しました。
 それを見た鍛冶屋は、ホッと胸をなで下ろしました。
「やはり鬼であったか。・・うん? おおっ、これは!」
 鬼が逃げ出した後には、九百九十九本の槍が残されており、どの槍もすばらしいできばえだったのです。
 その後、その槍は鬼の槍として評判になり、鍛冶屋はますますさかえたという事です。

おしまい

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