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11月19日の日本民話
友だちにあげたリンゴ
福岡県の民話
むかしむかし、あるところに、四人の男の子を持つお百姓(ひゃくしょう)さんがいました。
一番上の子どもの名前は太郎、二番目は次郎、三番目は三郎、四番目は四郎といいました。
ある時、お百姓さんが町へ行くと、とても大きなリンゴが売っていました。
とてもめずらしかったので、子どもたちのおみやげに七つ買って帰りました。
太郎と次郎と三郎は、二つずつもらいました。
四郎はまだ小さいので、一つだけです。
さて次の晩、お百姓さんは子どもたちを集めて、リンゴのことを聞くことにしました。
まず、四郎にたずねました。
「四郎や、リンゴはどうした?」
すると四郎は、ニッコリ笑い、
「みんな食べちゃった。おいしかったよ」
と、言いました。
その言い方がとてもかわいかったので、みんなはどっと笑いました。
「では、太郎はどうした?」
「リンゴのタネをとって、リンゴの木をつくるよ」
「なるほど、お前はわしのあとをついで、りっぱなお百姓になれるぞ」
お父さんはよろこんで、太郎をほめました。
「次郎は、どうした?」
「友だちに見せて、売ってやったよ。すごくもうかった」
「売ってしまっただと。お前はなんてよくばりだ」
お百姓さんは、ガッカリです。
「ところで、三郎はどうした?」
「・・・・・・」
おとなしくて気の弱い三郎は、何も言いません。
それでも、お百姓さんが何度もたずねるので、
「みんな、あげちゃった」
と、言いました。
「なに、あげてしまっただと? せっかくおみやげに買ってきてやったのに。いったい、だれにあげたんだ?」
お百姓さんが大きな声を出したので、三郎はいよいよなきそうな顔で言いました。
「友だちが病気でねていたので、持っていってあげたんだよ。でも、もったいないと食べてくれないので、まくらもとへおいてきた」
「よくやった! えらいぞ、三郎」
お百姓さんは思わず三郎をだきよせて、頭をなでました。
それから、兄弟たちに向かって言いました。
「太郎もりっぱだが、みんな、三郎のようなやさしい心をわすれてはいけないよ」
おしまい