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        世界のわらい話 第15話 
         
          
         
ウサギのしっぽ 
アメリカの昔話 → アメリカの国情報 
       むかしむかし、ウサギがオオカミにいいました。 
  「これからいっしょに、バターをつくってみないか?」 
  「いいね。よし、いっしょにバターをつくろう」 
   それでさっそく、ウシたちからたくさんのミルクをもらってきました。 
   そしてそれをツボにいれ、グルグルかきまわしてかためると、バターのできあがりです。 
  「さあ、さっそくこれをたべてみよう」 
   ウサギがそう言うと、オオカミが首をよこにふりました。 
  「いやいや、これはさむい冬がきて食べ物が少なくなるときまで、だいじにしまっておこう」 
   そこでバターをいっぱい入れたツボを、森の中にうめておくことにしました。 
  「こうしておいて、きみもぼくも冬になるまで、森の中のこのみちはとおらないというやくそくをしておこう」 
  「うん、そうしよう」 
   ウサギとオオカミは、やくそくしました。 
   ところがくいしんぼうのウサギは、そのバターをたべてみたくてたまりません。 
  「ああ、冬までまちきれないなあ。バターが食べたいなー。・・・そうだ。オオカミくんにはないしょで、ほんのちょっぴりなめてみよう」 
   それで自分だけ、そっと森の中へ入っていってツボをほりだし、中のバターを少し食べました。 
   さあ、そのバターのおいしいこと。 
   つぎの日になると、また食べたくなったので、 
  「もう、ちょっぴりだけ」 
  と、また森へ入っていきました。 
   そしてウサギが大いそぎで森の中からかけだしてくるところを、オオカミが見つけたのです。 
  「ウサギくん。森の道は、とおらないというやくそくだよ」 
  「ああ、その、それがね。じつは、森のむこうにいるねえさんが、かわいい男の赤ん坊をうんだというしらせをきいたので、はやく見にいきたくて、ついあの道をとおったのさ」 
  「ふーん。それならいいけど」 
   ところがつぎの日もまた、オオカミは森の道をかけていくウサギを見かけましたので、 
  「ウサギくん。きょうもやくそくをやぶったね」 
  「ああ、ごめんごめん。おねえさんがね、こんどはかわいい女の子をうんだというので、見にいったのさ」 
  「ふーん。それならいいけど」 
   そして二日たってまた、森からでてきたウサギをオオカミは見つけました。 
  「おいおい、またやくそくをやぶったな!」 
  「あっ、ごめん、おねえさんがね、かわいい三ばんめの赤ん坊をうんだのを見にいったのさ」 
  「毎日毎日、赤ん坊がうまれるものか。ほんとうは、あのバターを食べに行っていたんだろう」 
  「ウソじゃないよ。本当に赤ん坊が生まれたんだ」 
  「よしそれなら、これからいっしょに森の中へしらべにいこう」 
   オオカミはそういって、ウサギを森へひっぱっていきました。 
   そして、うめてあったバターのツボをほりだして、ふたをあけようとしたので、ウサギはあわてて、 
  「あいたた! おなかがいたくなった!」 
  と、いって、パタパタにげていきました。 
   オオカミがふたをとってみますと、ツボの中はすっかりからっぽになっていました。 
  「やっぱりだ! あのうそつきウサギめ!」 
   おこったオオカミは、ウサギをおいかけました。 
   そのときです。 
  「ああ、たすけてーぇ!」 
  と、さけぶ声がします。 
   オオカミが声のするほうへいきますと、草むらの中でウサギがバタバタとあばれていました。 
   あんまりあわててにげたので、うっかり人間が作ったワナにかかってしまったのです。 
   ワナに足をはさまれたウサギは、いっしょうけんめいさけびました。 
  「たすけておくれよ! オオカミくん!」 
  「いや、きみのようなウソつきは、もうぼくの友だちじゃないよ」 
  「ああ、どうかゆるしておくれ。もう二度とあんなことはしないから」 
  「ほんとうだね」 
  「ほんとうだとも」 
   ウサギがないてあやまったので、オオカミはウサギをワナからたすけてやりました。 
   でも、このときしっぽだけがワナにきられてしまったのです。 
   その時からウサギのしっぽは、いまのように短くなったのです。 
      おしまい 
         
         
        
       
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