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6月25日の世界の昔話

十三匹のハエ

十三匹のハエ
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 むかしむかし、小さな村に機織り職人(はたおりしょくにん)がいました。
 おかみさんがよぶと、機織り職人の夫は、いつもねころんでいて、
「うーん、なんだ?」
と、ねぼけ声で返事をします。
 でも不思議なことに、客が明日までにおりあげてくれとたのむと、夫はいつのまにか、きちんとおって渡すのです。
 畑のことも、おかみさんには不思議でなりません。
 おかみさんが見ると、夫はいつも昼寝をしているのに、収穫(しゅうかく)のときが来ると、近所の家より十倍は多くブドウでも野菜でも持って帰って来るのです。
 そんなある日、夫はよその町へ用事で出かけることになりました。
 おかみさんは、そっと夫のあとをついて行きました。
 森の道に来ると、夫は大きな木の下で立ちどまり、ポケットから何かをとり出して、木の根もとに埋(う)めて行きました。
 夫の姿が見えなくなると、おかみさんはほってみました。
 埋めてあったのは、大きなクルミの実が一つだけです。
「なんだ、つまらない」
 おかみさんはそのクルミをすてようとしましたが、中から音がしたので耳元に近づけました。
 すると中からは、ブンブンとムシの羽の音がして、こんな声も聞こえます。
『仕事はどこだ。仕事をおくれ』
 おかみさんは首をかしげて、クルミを持って帰りました。
 そして扉(とびら)もまどもきっちりとしめ、クルミをわってみたのです。
 すると中からブンブンブンブンと、十三匹のハエが元気よく飛び出して来たのです。
 部屋中を飛びまわるハエがあまりにうるさいので、おかみさんはどなりました。
「ハエよ、クルミに戻れ!」
 するとハエたちはクルミの中にはいったので、おかみさんはまた森の道の木の下に埋めに行きました。
 しばらくして夫が町から帰ると、おかみさんは正直に、森の木の下からクルミをほり、十三匹のハエを見たことを話しました。
 すると夫はニコニコ笑いながら、こう言いました。
「いつか話そうと思っていたんだが、俺はいつも機織りの仕事も畑仕事も、十三匹のハエたちにやってもらっているのさ。十三匹の力は十三人分の力でな。どんなことでも、あっというまにやってくれる。お前も自分の仕事を十三匹のハエにやらせるといいよ」
 夫からクルミをもらうと、おかみさんは次の日からさっそく、十三匹のハエに掃除(そうじ)や洗濯(せんたく)をさせ、のんびりと昼寝をしようと思いました。
 でも、十三匹のハエはブンブンと、羽を鳴らしながら働くのでねむれやしません。
 仕事がすんで、クルミの中にはいっても、
『ブンブンブン、ブンブンブン。仕事はどこだ、仕事をおくれ』
と、そのうるさく言うのです。
 おかみさんは、もうがまんできずに夫に言いました。
「どんなに大変でも、あたしは前みたいにくらしたいよ」
「そうだな。俺もこのままじゃ、機織りの仕事を忘れちまうよ」
 夫はクルミから、十三匹のハエを出して言いました。
「さあ、どこへでも、好きな土地へ行くがいいよ」
 十三匹のハエは、声をそろえて答えます。
『ブンブンブン、ブンブンブン。それなら、これまで働いてきた給料(きゅうりょう)をおくれ』
 夫は、まどの外を指さしました。
 空には森へ飛んで行く、十三羽の鳥が見えます。
 十三匹のハエは、ブンブンと羽を鳴らしてまどから飛んで行くと、一羽ずつ鳥をつかまえて、そのままどこかへ飛んで行ってしまいました。

おしまい

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