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世界のわらい話 第33話
ほらふき男爵 月へオノを取りに行く話
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わがはいは、ミュンヒハウゼン男爵(だんしゃく)。
みんなからは「ほらふき男爵」とよばれておる。
きょうは、トルコヘ戦に狩り出されたときの話をしよう。
運の強いわがはいでも、ときには、しくじることもあってな。
わがはいは、うかつにもトルコ兵につかまると、ドレイにされてしまったのじゃ。
わがはいに与えられた仕事は、トルコ王の牧場のミツバチの見はり番だった。
日がな一日、ハチのお守りをして、タ方になると巣箱へハチを連れもどすという、なんともぼうけん家には似あわぬ仕事じゃ。
さて、あるタ方のこと、ミツバチの数をかぞえると、一匹だけ帰っておらん。
そこでゆくえをさがしてみれば、二頭のクマが今しも、そのハチを食らおうとしているところだった。
わがはいはとっさに腰の銀のオノをひきぬくと、クマたちめがけて投げつけたんじゃ。
ところがオノは、ねらいをはずして上へ上へと空高くまいあがると、見るまにお月さまにつきささってしまったのじゃ。
さいわいクマはハチをほうり出して逃げてくれたが、となるとつぎは、オノを取りもどさなくてはならん。
だが手をのばそうにも、お月さまはあまりに高い。
どうしたものかと考えあぐねているときに、ポケットにあるトルコマメのことを思い出したのじゃ。
このマメときたら、なにしろのびるのが速いからな。
そこで足元の土に植えると、トルコマメはすぐに芽(め)を出し、ツルをのばし、あっというまに空ヘのびあがって、まもなく三日月のはじっこにからみついたんじゃ。
おかげでわがはいは、ラクラクと月へ到着した。
ところが月というところは、どこもかしこも銀色にかがやいていて、これまた銀のオノをさがすのが一苦労。
やっとのことで見つけ出し、さて地上に帰ろうとすると、なんたることか、マメのツルは太陽の熱で枯れてしまっておった。
しかたなくわがはいは、見つけたワラでナワをあみ、それをつたっておりることにしたんじゃ。
だがナワの長さが足りないので、少しおりると用済みのナワをオノで切っては下につぎたし、それをくり返して、あと地上に四〜五キロとなったとき、わがたのみのナワが突然切れて、わがはいはまっさかさまに大地に激突して、何十メートルも地中深くめりこんでしまった。
あのときは、本当に痛かったぞ。
そして深い穴から、どうやってはいあがろうかと腕をくんだときに目についたのが、生まれて四十年のばし続けていた、わが長つめじゃ。
これで穴の壁に階段をきざみ、無事、地上に戻ったというしだいじゃ。
では、また次の機会に、別の話をしてやろうな。
おしまい
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