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11月30日の世界の昔話
  
  
  
  魔法のツボ
  ポーランドの昔話 → ポーランドの国情報
 むかしむかし、あるところに、まずしいおばあさんがすんでいました。
   おばあさんは毎日、食べるものをもらってくらしていましたが、ある日、マメをもらったので、さっそく土にまきました。
   マメはドンドン大きくなって、ついには天までとどくばかりになりました。
   おばあさんは、
  (マメの木のてっぺんは、どんなだろう?)
  と、思って、のぼっていきました。
   すると、ふしぎな納屋(なや→ものおき)がありました。
   中に入ると、脱穀機(だっこくき)が金のからつぶをガラガラまわしていました。
  「ありゃ、これはとんでもないものを見ちまった」
   おばあさんは、あわてて下へおりていきました。
   ところが、いつのまにか、おばあさんのうでの中にツボが入っています。
   ツボの中にはタマゴがいっぱい入っていて、おばあさんはタマゴをそっと、わきの下に入れると、家に帰っていきました。
   ツボは、とてもふしぎなツボでした。
   おばあさんがミルクを飲みたいと思うと、ちゃんとミルクが入っているのです。
   おばあさんが大よろこびしていると、わきの下のタマゴがかえって、
  「はい、お母さん、コケコッコーッ」
  と、オンドリがとび出しました。
   おばあさんは友だちができたので、うれしくてたまりません。
   ミルクもたっぷり飲めて、食べものをもらうこともなくなりました。
   ふしぎなツボのうわさは、すぐに金持ちの耳に入りました。
   金持ちはある日、
  「火事だ!」
  と、さわいで、おばあさんの家から、ツボをぬすみ出してしまいました。
   そして、
  「ミルクが出せるなら、お酒も出せるだろう」
  と、ツボになみなみとお酒を出させて、毎日あびるようにのみました。
   家の者にもお客にも、ドンドン飲ませたので、金持ちの家はよっぱらいだらけになり、村一番のきたならしい家になりました。
  「お母さん、ツボをとり返してくるよ」
   ある日、オンドリはおばあさんにいって、金持ちの家までとんでいきました。
   オンドリは、金持ちの屋根にとまるとさけびました。
  ♪コケコッコーッ
  ♪金持ちの飲んでるお酒はぬすんだお酒
  ♪金持ちはとんでもないぬすっとだ
   これを聞いた金持ちも、家の人もビックリ、あわててオンドリをつかまえました。
   金持ちは、オンドリを井戸(いど)になげこみました。
   ところが、オンドリは水をぜんぶ飲みほして、また、屋根の上にとびあがりました。
  ♪コケコッコーッ
  ♪金持ちの飲んでるお酒はぬすんだお酒
   金持ちはまた、オンドリをつかまえて、ストーブの中にほうりこみました。
   オンドリは、井戸の水をはき出して火をけすと、
  ♪コケコッコーッ
  ♪金持ちはぬすっと
  と、さけびました。
   金持ちは、今度は金庫の中にオンドリをとじこめました。
   けれど、オンドリはお金をみんな飲みこんで、金庫をやぶってコケコッコーと出てきました。
  「ええい、いまいましい」
   金持ちは、とうとうオンドリの首をきって、焼いて食べてしまいました。
   すると、今度は金持ちのおなかの中から、
  ♪コケコッコーッ。
   金持ちはほとほとまいって、オンドリをはき出すと、おばあさんの家にツボを返しにいきました。
  「コッコちゃん、ありがとうよ」
   おばあさんはオンドリのもってきた金貨とツボのおかげで、つつましく幸せにくらしたということです。
おしまい