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ひろいや
(えど こばなし)
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あるところ に、びんぼうながや が ありました。
その ながや に、もさく と いう おとこ が こしてきました。
ところ が この おとこ、いったい なに を して くらしている の やら、まいあさ はやく でかけて は ひのくれ に かえってきます が、しょうばいどうぐ ひとつ もって いきません。
ふしぎ で ならない やぬし の おやじ が、あるとき きいて みました。
「おら の しょうばい か? おら の しょうばい は、ひろいや だ」
「ひろいや? はて、それ は どういう こと だ?」
「なあに、まいにち まちんなか を あるいて まわれば、なにか ひとつ は ひろうて かえれるもんだ。おら、それ で くらしてるんだ」
「・・・・・・?」
おやじ には、よく いみ が わかりません。
(ようし、それなら ひとつ)
と、おやじ は つぎ の あさはやく、もさく の あと を そっと つけて いきました。
そんなこと とは つゆしらず、もさく は とおり を まっすぐ あるいて いきます。
まち の なかほど を すぎても あいかわらず、てくてく あるいて いくばかり。
やがて じんじゃ の けいだい を とおり、となり の まち まで やってきました が、なにひとつ ひろう ようす は ありません。
こんな ちょうし で まち と いう まち を ぜんぶ あるきまわる うち に、ゆうがた に なりました。
もさく も あきらめた のか、やっと いえ に もどる ようす です。
おかげ で おやじ も くたびれはてて もどってきました が、ハッ と き が つくと、どうやら ふところ の おかね を にひゃくもん を おとしていました。
「あいつ の せいで、ろくなこと は ねえ」
と、ひとりごと を いっている と、そこヘ もさく が かえってきました。
(はら は たつ が、もんく を いうわけには いかんわい)
おやじ は しらんかお で、いいました。
「きょう は ええ ひより で ひと も おおかったろうし、さぞ ええもの を ひろったろう」
「それ が おやじどん、きょう は いつになく ふけいき じゃった。けれども、かえりがけ に そこ の ろじ で にひゃくもん を ひろうたんで、まあ、いちにち あるいた かい は ありました」
おしまい
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