2月5日の日本の昔話
星を落とす
むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
ある日のこと、きっちょむさんが、村の人たちみんなにむかっていいました。
「今夜、わたしは空の星を、ほうきではいて落とすから。みんなで拾いにきてください」
「なんだって? 空の星をほうきで落とす。はん。ばかばかしいことをいいなさんな」
「じゃあ、こなくてもいいよ。わたしひとりで落とすから。あの空の星はみんな金だから、わたしひとりでひろって、お金持ちになるよ。あとでうらやましがったって知らないから」
きっちょむさんの言葉に、村の人たちもついつい欲が出て、
「それじゃあ、いってみようか」
と、いうことになりました。
やがて夜になりますと、きっちょむさんの家の回りに、みんながぞろぞろと集まってきました。
「おーい。きっちょむさん」
と、呼んでみますと、
「おーい。ここだ」
と、頭の上で答える声がします。
見てみると、きっちょむさんが屋根の上に登っていて、手に長い竹ぼうきを持っていました。
「きっちょむさん、星はまだ落ちないのかい?」
「まあ、そんなに急ぐもんじゃあないよ。もう少し、待ちなさい」
そういって、きっちょむさんは空を見あげました。
暗い空には、キラキラとたくさんの星が光っています。
「きっちょむさん、あんな高い空まで、ほうきが届くのかい?」
と、みんなが笑いながらいいますと、きっちょむさんはまじめな顔で、
「届くとも、今にきっと、金の星をはたき落としますよ」
そういいながら、ほうきを振り回しましたが、星は一つも落ちてきそうにありません。
「あれ、おかしいな?」
きっちょむさんも、少しあわててきました。
「ほれ、ほれ、落ちろ! はやく落ちろ!」
どなりながら、まだ、ほうきをふっています。
「もう、よしなよ、きっちょむさん」
「なに、よすものか。見ていろ!」
きっちょむさんは、なおもほうきをふり続けました。
するとそのとき、空の星が1つ、スーッと流れて、どこかへ落ちていきました。
それは流れ星です。
でも、きっちょむさんは、
「よし、やったぞ!」
と、大きな声でよろこびました。
「そら、そら、星が落ちただろう。わたしがほうきで落としたんだよ。みんないって、ひろっておいで」
と、得意になっていいました。
おしまい
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