11月10日の日本の昔話
ほうびの米俵
むかしむかし、彦一(ひこいち→詳細)と言う、とてもかしこい子どもがいました。
殿さまが死んで、若さまが殿さまになってから、いく年かたったある日。
彦一の家に、お城から、つかいのさむらいがきて、
「殿さまが、おまえにほうびをつかわすそうじゃ。城にまいるがよい」
と、いいました。
「はて、何をくださるおつもりじゃろ。若さま、・・・いや殿さまは気前(きまえ)がいいからな。ほうびがたくさんあると持ちきれないから、ねんのためにウシをひいていこう」
彦一が牛をひいて、お城にあがると、
「これ、彦一。ちこうよれ。そちのとんちのかずかず、あいかわらず城でもひょうばん。おかげで、父上なきあとのこの城も、ほがらかじゃ。よって、ほうびをとらす」
殿さまじきじきのお言葉です。
「はーっ、ありがたきしあわせにぞんじます」
「では、彦一へのほうびをもて」
お殿さまが手をたたくと、けらいがひとふりの刀と、米俵(こめだわら)を一俵(いっぴょう)もってきました。
「ははーっ」
彦一は、あたまを床にすりつけて、殿さまにおれいをいいました。
でも、どうせいただくなら、米俵をもう一俵ほしいとおもった彦一は、牛のせなかのかたほうに刀をくくりつけ、もうかたほうに、米俵をのせることにしました。
刀はかるいけれど、米俵はズッシリとおもいので、牛の体はななめになりました。
おもさがかたよりすぎているため、うまくあるきだせません。
すると彦一が、牛にむかっておこりました。
「おまえというやつは、牛のぶんざいで、お殿さまからいただいた、かたほうのごほうびをおもんじ、かたほうをかろんずるつもりか! はよう、たたんか!」
牛はヨロヨロたちあがりましたが、うまく歩けずに、また、すわりこんでしまいました。
「うーん、やっぱり、このままではむりなようだ。さて、どうするか?」
彦一がわざとこまっていると、さっきからこのようすをながめていたお殿さまが、けらいにいいつけました。
「牛が、かたにでなんぎしておる。彦一に、米俵をもう一俵、つかわしてやれ」
牛は米俵を左右にふりわけ、こんどは調子よく歩き出しました。
おしまい
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