11月18日の日本の昔話
夢買い長者
むかしむかし、あるところに、年をとったお百姓(ひゃくしょう→詳細)さんと若いお百姓さんがいました。
「きょうは、山へたきぎを切りにいこうか」
「うん、そうしよう」
二人は仲良しなので、今日も一緒に山ヘ出かけました。
さて、お昼になると、お百姓さんたちは草の上に腰をおろしてお弁当を食ベました。
「ああ、ねむくなった。おれはちょっと昼寝をするよ」
年とったお百姓さんはゴロンと横になり、すぐにいびきをかきはじめました。
そこへ、一匹のアブが飛んできました。
ブーン、ブーン。
アブは、寝ているお百姓さんの鼻の穴にもぐりこみました。
「たっ、たいへんだ!」
若いお百姓さんは、ビックリ。
心配しながら見ていると、アブは鼻の穴から出てきて、遠くへ飛んでいってしまいました。
「ああ、さされなくてよかったよ。だけど、おかしなアブだなあ」
その時、年とったお百姓さんが目をさましました。
「なんだ。今のは夢だったのか」
そういって、年とったお百姓さんは若いお百姓さんに言いました。
「おれ、今、不思議な夢を見たんだよ。アブが飛んできてな、『ここをほれ』というからほったら、つぼが出てきて、中にいっぱいお金が入ってたんだ」
「へえっ、じゃ、さっき鼻の中に入っていったあのアブかな? いったい、お金の出たのはどこなんだね?」
若いお百姓さんがたずねると、
「佐渡(さど)という島のお寺にいったんだ。その庭に白いきれいな花が咲いてたよ。その木の下なんだ」
「なあ、ぼくにその夢を売ってくれないか?」
「夢を売る? お前、夢なんか買ってどうするんだい?」
「そのお寺へいって、ほってみるんだよ。・・・で、いくらで売ってくれる?」
「あきれたなあ。夢を本気にするなんて」
年とったお百姓さんは、笑って相手にしません。
それで若いお百姓さんは持っていたお金を渡すと、すぐに舟に乗って出かけていきました。
海を渡って島につくと、古いお寺はすぐに見つかりました。
庭へ入っていくと、そこへ年とったお坊さんが帰ってきたので、
「もしもし、和尚(おしょう→詳細)さんですか。どうぞわたしをやとってください」
「ほう、これは元気そうな。ちょうど一人さがしていたところだ。さあ、お入り」
和尚さんはよろこんで、若いお百姓さんをやといました。
その日から、若いお百姓さんは井戸(いど→詳細)に水をくんだり、ご飯をつくったりと、よく働きました。
そして、毎日庭へ出ては、白い花が咲かないかと待っていたのです。
すると、庭の木につぼみがふくらみました。
「これだな。今にきっと白い花が咲くぞ」
楽しみにしていましたが、咲いたのは赤い花でした。
若いお百姓さんは、ガッカリです。
一年たって、別の木に白い花がたくさん咲きました。
「これだ! この木の下だな」
ほってみると、聞いた夢のとおり、きたないつぼが出てきました。
若いお百姓さんがふるえながら、つぼをかたむけると、
ジャラジャラジャラ。
お金がどっさり出てきたのです。
「ああ、ほんとだった。ほんとだった」
夢を買ったお百姓さんは、大金持ちになって村へ帰りました。
おしまい
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