12月20日の日本の昔話
虫干し
むかしむかし、きっちょむさん(→詳細)と言う、とてもゆかいな人がいました。
きっちょむさんは、今日はカツオブシを売り歩いています。
だけど、一日売り歩いても全然売れません。
そのうちお腹が空いてきましたが、ふところにはお金がありません。
「どっかで、何か食いてえが」
と、思いながらウロウロしていると、庄屋(しょうや→詳細)さんの家にやってきました。
ふとのぞくと、おいしそうなぼたもちを作っています。
きっちょむさんはゴクンと、つばを飲みこんで、中へ入って行きました。
「きっちょむさん、なんの用だね!」
また、何かされると思い、庄屋さんはつめたく言いました。
「へえいつもお世語になっとります。すみませんがが、おぼんをひとつかしてくださりませんか」
そう言っておぼんをかり、カツオブシを山のようにもりあげました。
庄屋さんは、きっちょむさんがみやげを持ってあいさつに来たと思い、急にあいそが良くなりました。
「おお、まあ上がって茶でも飲んで行くといい。そうじゃ、今さっき、ぼたもちを作ったところじゃ。少し食べて行かんかね」
「ありがとうございます。それじゃあ遠慮(えんりょ)なしに」
きっちょむさんは上がりこんで、パクパクとぼたもちに口にほおばりました。
やがて、腹がいっぱいになり、
「ごちそうになりまして。それでは、このへんで失礼します」
そう言いながら、先ほど盛り上げたカツオブシを、また袋にもどしました。
みやげを持ってきたと思っていた庄屋さんは、あてがはずれてガックリ。
また、こわい顔になって、
「なんでまた、おぼんにカツオブシをあけたんじゃ!」
するときっちょむさんは、すました顔で、
「へえ、こうして、ときどきおぼんにあけて風を通さないと、カツオブシに虫がついてしまうんで」
そう言うと、空のおぼんを庄屋さんに返して、行ってしまいました。
おしまい
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