6月19日の日本民話
ものをいうじぞうさん
高知県の民話
むかしむかし、あるところに、つきたてのぬくぬくのおもちが大好物なおじいさんがいました。
けれど、おじいさんは村一番の貧乏なので、正月がきても、もちなど食べることが出来ません。
ある日の事、おじいさんは仕事の帰りに、山道のおじぞうさんの前で腰を下ろしました。
そして、
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
と、ためいきをついたのです。
すると、だれかがおじいさんの言葉をまねして言いました。
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
「だれだ?」
おじいさんがふりむくと、そこにはおじぞうさんしかいません。
「なんと、おじぞうさまがしゃべったのか? ・・・いや、そんなバカなことは。まさか石のおじぞうさまが、『ああ、ぬくぬくのもちが食べたい』などというわけが」
と、言ったとき、ふたたびおじぞうさんが言ったのです。
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
ビックリしたおじいさんは、おじぞうさんを持って帰ると、村のみんなにその話をしました。
しかし、村の人たちは、
「なにをバカなことを。石のじぞうさんが、ものいうてたまるか」
と、だれも本気にしてくれません。
「ようし、それなら見せてやる」
と、おじいさんはみんなの前で、おじぞうさんに向かって言いました。
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
するとおじぞうさんも、さっきと同じようにおじいさんのまねをして、
「ああ、ぬくぬくのもちが食べたい」
と、いったのです。
この話を耳にした庄屋(しょうや)さんが、大金でこのおじぞうさんを買ってくれたので、おじいさんはぬくぬくのおもちをいつでも食べられるようになったと言う事です。
おしまい
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