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2010年 2月8日の新作昔話

トビの鳴き声

トビの鳴き声

 むかしむかし、息子がとてもひねくれ者のトビの親子がいました。
どれくらいひねくれ者かと言うと、父親が、
「雨が降るから、家の戸を閉めてくれ」
と、言えば、家の戸を全開に開けるし、
「そこの白い物を取ってくれ」
と、言えば、わざと黒い物を取ってくるのです。
そんな息子に苦労したトビの父親は、やがて重い病気になり、あと数日の命となってしまいました。
(おれの人生は苦労の連続だったが、もうすぐそれも終わりだ。せめて死んだ後は、安らかにちゃんとした墓で眠りたいものだ。・・・しかし、ちゃんとした墓に入りたいと言っても、あのひねくれ息子じゃあ、反対に死んだおれを海に投げ捨てるかもしれん。・・・まてよ、それなら、反対の事をお願いすればいいんだ)
そう考えた父親は、自分が死ぬ間際になると、息子にこう言いました。
「息子よ。おれの遺言を良く聞け。おれが死んだら、決してちゃんとした墓に入れるなよ。ちゃんとした墓に入れず、海にでも投げ捨ててくれたらいいからな」
さて、間もなく父親が死んでしまうと、トビの息子は今までの親不孝を大変恥ずかしく思いました。
「おれがひねくれ者で親父に苦労をかけてきたから、親父は早死にをしてしまったのだ。・・・親父、すまなかったな。せめて遺言ぐらい、ちゃんとかなえてやるからな」
そして息子は父親の言葉通り、父親の亡きがらをちゃんとした墓には入れずに、海へと投げ捨てたのです。

さてその時、死んだと思われていた父親はまだわずかに生きていて、海の中から父親の最後の言葉が聞こえてきたのです。
「・・・塩からいよー。・・・塩からいよー」
それを聞いた息子も、海の上を飛び回りながら父親の言葉を真似しました。
「塩からいよー。塩からいよー」
この時からトビの鳴き声は『塩からいよー』となり、それが変化して今では『ぴーひょろろー』と鳴くようになったそうです。

おしまい

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