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2010年 3月8日の新作昔話

真冬のイチゴ

真冬のイチゴ
福井県の民話

 むかしむかし、あるところに、お千代とお花という姉妹がいました。
 お母さんは、どういう訳か姉のお千代が大嫌いで、いつも妹のお花ばかりを可愛がっていたのです。
 ある冬の寒い日の事、お花がこんな事を言いました。
「お母さん。お花、イチゴが食べたい」
 するとお母さんは、お千代に言いつけました。
「お千代、お花の為に、いますぐイチゴを摘んでおいで」
 でもイチゴは夏の果物なので、こんな寒い冬にあるはずがありません。
 そこで、お千代は、
「しかし、お母さま。冬にイチゴなんて」
と、言ったのですが、
「つべこべ言うんじゃないよ! 可愛いお花がイチゴが食べたいと言うんだから、お前はイチゴを摘んでくればいいんだよ! ほれ、弁当におにぎりをやるから、はやく行くんだよ!」
と、お母さんはお千代を家から追い出してしまいました。
 さて、お千代は仕方なく雪の降る山へと行ったのですが、どこにもイチゴなんてありません。
「どうしよう。でも、このままでは帰れないし・・・」
 困ったお千代が雪の上で途方に暮れていると、近くの山小屋に住むおじいさんが、お千代を自分の山小屋に招いて言いました。
「どうした。こんな雪の山に、たった一人で何をしにきたんじゃ?」
「はい、お母さまに、イチゴを摘んでこいと言われたので」
「そうか。イチゴをのう。それより、寒いだろう。遠慮せずに火にあたれ」
「はい。ありがとうございます」
 お千代は火にあたりながら、おじいさんに尋ねました。
「おじいさん、お弁当を食べてもいい?」
「ああ、いいとも、いいとも」
 お千代が弁当の包みを広げると、そこには米が一粒も入っていない、小さなヒエのおにぎりが一つ入っていただけです。
 それを見たおじいさんは、お千代に尋ねました。
「すまんが、わしにも、ちょっと分けてはくれんか?」
「うん。これでよかったら、みんなあげる」
「そうか。お前はいい子だな。・・・そうそう、イチゴを摘みに来たのなら、小屋の前の雪の消えたところへ探してみるといいぞ」
 そこでお千代が小屋を出てみると、雪の消えたところにまっ赤なイチゴがたくさんあったのです。
 喜んだお千代は、カゴいっぱいにイチゴを摘んで家へ帰りました。
 すると、イチゴを摘んでこいと言ったお母さんがびっくりして、お千代に尋ねました。
「お千代、お前、この寒い冬のどこにイチゴがあったんだい?」
 そこでお千代は、お母さんとお花に、山小屋での出来事を話してきかせました。
 するとお花が、
「明日は、お花がイチゴを摘みに行く」
と、言い出したのです。
 そして次の日、お花は、お母さんが用意してくれたお弁当とカゴを持って、お千代に教えてもらった山小屋のおじいさんのところへ行きました。
「おじいさん。わたし、イチゴを摘みに来ました」
「そうか、イチゴをのう。それより、寒いだろう。遠慮せずに火にあたれ」
 お花は火のそばに行くと、何も言わずに弁当を広げました。
 お弁当は、お千代の時と違って、美味しそうな白米のおにぎりが二つ入っていました。
 それを見たおじいさんは、お花に尋ねました。
「すまんが、わしにも、ちょっと分けてはくれんか?」
 しかしお花は、
「いやや、これはお花のだから、おじいさんにはやれん」
と、おじいさんの目の前で、二つのおにぎりを美味しそうに食べてしまったのです。
 がっかりしたおじいさんは、お花に言いました。
「お前、イチゴを摘みにきたのなら、小屋の前の雪の消えたところへ行ってみな」
 そこでお花が小屋を出てみると、雪の消えたところにまっ赤なイチゴがたくさんあったのです。
 お花はそのイチゴをかごいっぱいに摘むと、喜んで家へ帰りました。
「お母さん、ただいま。イチゴをたくさん摘んできたよ。ほら」
 お花がそう言ってカゴを開けてみると、中にはイチゴではなくて、ヘビやカエルやムカデがいっぱい入っていたそうです。

おしまい

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