2010年 10月4日の新作昔話
サルの王さまと二人の旅人
イソップ童話
むかしむかし、けっして嘘をつかない正直者と、けっして本当の事を言わない嘘つきの二人組みが旅をしていて、サルの国へと迷い込んでしまいました。
王さまのサルは、自分たちが人間たちの目にどのように映るのかを知りたいと思って、二人を捕まえて連れて来るようにと命じました。
二人が連れて来られると、王さまのサルは次のような挨拶で彼らを迎えました。
「異国の者たちよ、そちたちには、朕(ちん→中国で国王を意味する言葉)がいかなる王に見えるかな?」
すると嘘つきの男は、こう答えました。
「私には、大変偉大な王さまに見えます」
「それでは、朕の周りにいる者たちは、そなたには何と見える?」
「彼らですか・・・」
嘘つき男は少し考えて、こう答えました。
「彼らは、偉大な王さまに相応しい、大使や将軍たちとお見受け致します」
「ほう。そうか、そうか」
サルの王さまと廷臣たちは、すっかりその嘘に気を良くして、この嘘つき男に素晴らしい褒美を使わすようにと命じました。
これを見ていた正直者は、こんな風に考えました。
(嘘でこんなにすごい褒美がもえるのだから、いつものように本当の事を言えば、もっとすごい褒美が貰えるかしれない)
すると今度は、正直男にたずねました。
「ではそなたには、どの様に見えるかな?」
正直な男は、正直に答えたました。
「はい。あなたは、とても優秀なおサルです。そしてあなたに従うお友だちも、とても優秀なおサルです」
「なんだと!」
サルの王さまは本当の事を言われて怒りに震えると、男を牢屋に放り込んでしまいました。
このお話しのように、いつも正直者が得をすると限りません。
うそも場合によっては、相手も自分も幸せにするのです。
おしまい
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