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2011年 9月16日の新作昔話

田上(たがん)のキツネ

田上(たがん)のキツネ
鹿児島県鹿児島市の民話

 むかし、鹿児島の田上(たがん)と呼ばれるあたりに、まだキツネがいた頃のお話です。
 一人の百姓があぜ道でたばこをふかしていると、わきの草やぶで何かごそごそと音がしました。
「何じゃろう?」
 じっと見ていると、一匹のキツネがツワの葉をちぎってはやぶの上に敷いて、それが終わると今度はツワの汁を体中にこすりつけているのです。
「はて、不思議な事をするもんじゃ」
 そして体中が汁だらけになったキツネは、ごろんごろんとツワの葉の上で転がりました。
「ははーん。こりゃ、何ぞに化けるところじゃな」
 そのうちキツネは、それはきれいな女の子に化けてしまいました。
「へー、大したもんじゃ」

 さて、百姓が見ていたとは知らないキツネが、すました顔で村の方に行こうとするので、百姓は思いきって声をかけました。
「キツネよ、よう化けたもんじゃな。まこと、べっぴんなおなごじゃ」
 するとキツネはびっくりして、百姓に言いました。
「おじさん、見ていたの?」
「ああ、始めから見とったぞ。
 じゃが、わしが思うに、キツネはやっぱりキツネでいる方がええぞ。
 いくらべっぴんに化けても、人間には尻尾など生えておらんからな」
「えっ?」
 キツネがお尻に手を当てると、百姓の言うようにキツネの立派な尻尾はそのままでした。
 娘に化けたキツネは顔をまっ赤にすると、はずかしさに顔を押さえながら逃げていきました。

 それからこの田上には、キツネが現れなくなったそうです。

おしまい

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